「中小企業憲章」の読み方

~政府はなぜ中小企業憲章を制定したのか~

9月2日、中同協は中小企業憲章本部と政策委員会の合同会議に、憲章作成を中心的に担った中小企業庁事業環境部企画課長の宮本昭彦氏をお招きし、中小企業憲章(本紙8月15日付掲載)の内容を逐条的に解説していただきました。紙面の制約から憲章の趣旨、考え方にしぼって以下にご紹介します。

中小企業憲章を制定する目的は、政府が総力を挙げて中小企業政策に取り組むという強いメッセージを発信し、政府がどういう方向で政策を進めようとしているのかをあらかじめ示すことで、意欲ある中小企業が新たな展望を切り開くことができるようにすることです。

特に、わが国では、少子高齢化、経済社会の停滞などにより、将来への不安が増している中、不安解消の鍵となる医療、福祉等の分野で、変革の担い手である中小企業が力を発揮することでわが国の新しい将来像が描けるとの、中小企業に対する新しい見方を提示していることがポイントです。

前文は中小企業憲章を定めた趣旨を記載したものです。まず、「中小企業は、経済を牽引する力であり、社会の主役である」とあります。これまで政府は、中小企業の経済的役割については位置づけてきましたが、中小企業の社会的役割に着目したのは憲章が初めてだと思います。

前文では、中小企業が困難を乗り越え、日本の未来を切り拓いていってほしいと期待を述べ、「政府が中核となり、国の総力を挙げて、中小企業の持つ個性や可能性を存分に伸ばし、自立する中小企業を励まし、困っている中小企業を支え、そして、どんな問題も中小企業の立場で考えていく」と強調しています。

基本理念は、中小企業に対する基本的な認識を整理したものです。ここでは、「中小企業は、経営者と従業員が一体感を発揮し、一人ひとりの努力が目に見える形で成果に結びつき易い場である」とか、「小規模企業の多くは家族経営形態を採り、地域社会の安定をもたらす」と位置づけるなど、小さい企業の利点にも着目しています。

基本原則は政策目標ですが、5項目挙げています。次に「これらの原則に依り、政策を実施するに当たっては」とあって、6項目記載していますが、この観点から政策を遂行するということです。特に、「中小企業が誇りを持って自立することや、地域への貢献を始め社会的課題に取り組むことを高く評価する」の項は、地域で志をもって起業することなどを積極的に評価しようということです。

行動指針はここに記載された8つの柱に沿って具体的な施策を進めるということです。「8.中小企業への影響を考慮し政策を総合的に進め、政策評価に中小企業の声を生かす」では、関係省庁と一体となって総合的に政策を大いに進めていきたいと考えています。

実は、わが国には、中小企業政策をどういう考えで進めていくのかという国の考え方を示したものがありませんでした。今回の憲章で、政策の理念・考え方を初めて整理しました。

この憲章は、ある意味でたたき台です。中小企業の方々と政策について議論を深め、望ましい施策につながっていく、「中小企業の方々とともに考えていく政策」をめざしたいと考えています。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2010年 9月 15日号より