人と地球環境にこだわり続けて価値創造~「同友エコ」環境経営賞 まるは油脂化学(株) 社長 林 眞一氏(福岡)

【環境経営で企業革新を―「同友会エコ」受賞企業の取り組み】(3)

林社長

 昨年の全国総会でキックオフした中同協「同友エコ」。今回は、環境経営賞を受賞したまるは油脂化学(株)(福岡)を紹介します。同社は、企業理念に「 健康と地球環境を考えたライフサイクルの創造 」を掲げ、天然素材にこだわった無添加石けんを製造しています。

こだわり続けて78年

 1932年(昭和7年)、福岡県久留米市で林商店として産声を上げたまるは油脂化学(株)は、企業理念に「 健康と地球環境を考えたライフサイクルの創造 」を掲げ、天然素材にこだわった無添加石けんの製造を行っています。

 創業当時は、扇子や髭そりなどを扱う雑貨店で、その傍らで固形石鹸やクリーニング用、工業用の石けんを製造していました。その後、1945年に本格的な石けんの製造販売会社として設立されました。

 同社が無添加石けんの製造に取り組み始めたのは、73年の第1次オイルショック後です。当時、赤ちゃんのおむつかぶれや、学校給食の調理師の手荒れの原因が合成洗剤ではないかとささやかれていました。その中で、同社は、人にやさしい無添加せっけんのコンセプトで「7色」「やさしくなりたい」シリーズの製造を開始しました。

 以来、「美しくありたい、もっと肌にやさしい石けんを」と願う消費者の声にこたえるべく、研究に研究を重ね、体と地球の健康を目指し、多くの人に喜ばれる製品づくりを続けています。

価値に共感するお客様と共に

石鹸商品

 同社の石けんは、天然素材にこだわり、仕込みから熟成まで、昔ながらの「釜炊き」の方法で90日間かけてつくられます。一般に市販されている石けんより価格は高いものの、その価値に共感して購入してくれるお客様があり、そのお客様からの意見や要望は、常に進化し続ける製品づくりへとつながります。

 現社長の林氏自身も、同社での営業時代に、お客様から健康や地球環境に関するセミナーなどを勧められ、触発されたといいます。また、無添加石けん特有のにおいが気になるとの声をきき、ハーブを配合したさまざまなバリエーションを生み出してきました。

 長い間、無添加石けんの製造に取り組んでいることから、「より自然であること。より身近であること。より安心であること」への周囲からの要望や期待も強いものとなってきます。その要望にこたえることと、同友会で学んだ「自社は何屋か! 自社の強みは何か! 深く穴を掘れ、周囲は自然に広くなる!」ということが重なりあい、「製品を売るというよりも、物づくりの心、価値や思いを買ってもらう」という思いになり、お客様に目を向け、自社を客観的に捉えた製品づくりへとつなげています。

健康と環境を消費者と共に考える姿勢

 製造過程で出る排水は、廃水槽にメダカが元気に泳ぎ回る徹底した管理を行っています。また、製造される無添加せっけんは、合成界面活性剤、合成着色料、酸化防止剤、保存料などは一切使用しておらず、使った後も成分が100%分解されて自然界へと戻っていきます。製品を使用した人も環境への配慮にかかわることができるのです。

 林社長は、「私たちの会社は、無添加石けんを通じ、体と心の健康に必要な情報や手段を共に考え、そしてご提案すること。地球環境問題に対し、正面から向かい合い、消費者と共に取り組んでいく姿勢を持ち続けたいと思います」と語ります。

環境事業所づくりからネットワークまで

 まるは油脂化学(株)の環境への取り組みは商品づくりだけではありません。

 福岡同友会地球環境委員会の取り組みの一環として、4年前から、オフィス紙類の分別を徹底してペーパーリサイクルを行ったり、冷房は室温が30度になったら付けるなど、オフィスでの取り組みも行っています。事業所や工場の主要な場所の蛍光灯をLEDに切り換えるなど環境商材の設置も積極的です。

 08年には、同委員会からの呼びかけにこたえ、福岡県が推進するエコ事業所宣言に登録、自社でできるさまざまな活動に取り組んでいます。

 今回、「同友エコ」に取り組んだことで、今まで正式に表にしていなかった電力や燃料の使用量が時系列で分析でき、数値の変化の理由を明確にすることで目標を考えるようになりました。また、合理化のため実施した製造設備の配置換えでは重油の使用量の激減につながり、いろいろな場面でまだまだ削減できることを発見できました。

 今後は、地産地消にこだわった素材を原料にした製品開発や、業種にとらわれない同じ価値観を持った人たちとの仲間づくりをすすめ、さまざまなコラボレーションとそれに共感するお客様を増やしていきたいと林社長は話しています。

環境への想い

 私たちは、大昔から自然界の生態系・食物連鎖を壊さないような生活習慣を受け継ぎながら、地球上の生物達と上手に共存することを心がけてきました。しかし近代文明の進歩は、これらに反し多くの汚染を生み出してきました。今後の生産企業は、地球環境や私たちの健康な生活を守るための、積極的な化学成分を使用しない製品づくりに努めなければなりません。弊社は創業以来、自然成分にこだわる商品の開発・改良を繰り返しながら自然派製品の製造をしてまいりました。これからも、更に安心してご使用いただける製品をご提供できるよう努力し続けていきます。

会社概要

創立 1932年
資本金 1050万円
社員数 14名
業種 固形石けん、石けんシャンプー、台所用液体石けん、クレンザー、基礎化粧品ほか
所在地 福岡県久留米市高野2丁目
TEL0942-32-9529
http://www.nanairo.co.jp/

「中小企業家しんぶん」 2010年 10月 5日号より