ソフト支援活用の勧め

【中小企業のCO2削減努力を活かす!―国内クレジット制度活用のすすめ】(4)

 国内クレジット制度は、大手企業による自主行動計画の達成と、中小企業等の省エネ促進の同時実現をめざす制度です。中小企業向けに、国によるソフト支援事業が用意されています。

 省エネ診断及び削減計画書の作成と審査依頼、実績報告書の作成支援と確認審査依頼、国内クレジット認証委員会への申請手続き、クレジットの買い手探しまで、一連の作業をすべて民間のソフト支援機関が代行実施するものです。このソフト支援を利用して、国内クレジット制度利用の事例が幅広い業種に広がっています。

 国内クレジット制度で認められているプロジェクトには、次の3つのパターンがあります。

◆通常型排出削減事業:中小企業等がクレジットの買い手(=共同事業者)と協働して実施するタイプのプロジェクトです。通常の省エネ以外にも、ユニークな削減メニューが国内クレジット認証委員会に多数提案され、承認されています。
・ハロゲンのダウンライトを多用している店舗が、LEDに変更して電気使用量を大幅に減らす(方法論006)
・重油ボイラーで加温している温泉施設が、温泉排熱を回収、再利用することで重油消費量を減らす(方法論009)
・小水力発電設備の導入により、施設の買電量を減らす(方法論017)
・雪氷融解水のエネルギーを利用し、空調設備の電気消費量を減らす(方法論019)
・ガソリン車から電気自動車に切り替えることで、化石燃料の消費をゼロにする(方法論020)

◆バンドリング型排出削減事業:複数のプロジェクトの小規模削減量を合算して一定規模以上の削減量にする仕組みです。この手法は、中小企業が集まる工業団地や、商店街でも適用できます。これには2つのパターンがあります。
・同一の経営主体が複数の削減事業を実施。例えば、自治体が小中学校への太陽光発電設備導入と、保育所の木質ボイラー新設を同時に行う。各プロジェクトの削減見込量は少量であっても、合算することで一定以上の削減が見込まれる。
・経営主体が別々の削減実施事業者、例えば、ハウス栽培農家がグループを作り重油焚き暖房から電気式ヒートポンプ暖房に転換、削減成果であるクレジットを大手企業に売却。この場合は、削減メニューが共通であることが必須要件です。

◆プログラム型排出削減事業:削減量がきわめて小さいため、国内クレジット制度の利用条件に合わないような小規模排出削減、例えば家庭の省エネまで制度の対象にできるようになりました。この考え方と活用事例は次号で紹介します。

向井征二/(株)日本環境取引機構代表取締役(愛知)(元・経済産業省「中小企業等CO2排出削減検討会」委員)

「中小企業家しんぶん」 2010年 10月 15日号より