【経済データを読む】経営理念の効果

 宮田矢八郎・産能大学経営学部教授によれば、TKC(税理士および公認会計士の組織)の経営指標データ(2002年版)22万6661社のうち、黒字企業は11万2483社、赤字企業は11万178社。これを分析すると高製品力が高収益要因であるとのこと。さらに優良企業は1万1476社で、製造業でいえばその原因はイノベーション=独自性であり、その源泉は経営理念であるとしています。

 さらに「経営理念あり」2,752社は、平均経常利益4,900万円、「経営理念なし」2,236社は、平均経常利益2,900万円。「売上10億円以上、利益3,000万円以上をあげる企業は経営理念が必要」とのデータを出しています(表(1))。

 さらに「経営理念なし」企業のうち、36%は「経営理念形成途上」との回答で、これを含めると「経営理念あり」が69%、「なし」が28%となり、優良企業の7割は「経営理念あり」となります。また、最も経常利益が高いのは、創業後11年目以降に経営理念を形成した企業であるとしています(宮田矢八郎著『理念が独自性を生む』、ダイヤモンド社刊より)。

 同友会景況調査(DOR)7~9月期のオプション調査(経営指針)では、経営理念の有無による業況や売上への影響を比較。業況判断DIでは「経営理念あり」が+2で、「ない」企業が-24。売上高DIでは「経営理念あり」が+2で、「ない」企業が-2、と顕著な結果になっています(表(2))。

 さらに、2009年の「企業変革支援プログラム」登録企業(1,063社)でいえば、「経営指針あり」779社、「経営指針なし」219社。経営指針を作成している企業のうち、作成3期以下ではあまり同プログラムの指標は伸びませんが、10期以上で顕著に指標が改善されている結果が示されています。「経営指針は1回創(つく)っただけでは成果がでない。続けてこそ効果が表れる」と言えます。

「中小企業家しんぶん」 2010年 11月 25日号より