歴史の知恵 平和の糧に

元旦の新聞各紙の社説を読んで

 昨年は政権交代後の年明けとなり、ある種の高揚感が元旦社説にも漂っていたような気がします。

 では、今年は。全国紙の出だしは、「なんとも気の重い年明けである」(朝日新聞)、「めでたいとは言い難い年明けだ」(日本経済新聞)、「四海の波は高く、今にも嵐が襲来する恐れがあるというのに、ニッポン丸の舵取りは甚だ心もとない」(読売新聞)と悲観色が前面に。この1年で相当に政局が行き詰まった様子がにじみ出ています。

 元旦からなんとも暗い出だしです。それを払しょくするための処方箋はといえば、朝日が「与野党の妥協しかない」と提言すれば、読売も「暫定的な連立政権の構築を」と応じます。読売は「日米同盟の強化」など4つの提言をしていますが、「いわゆるナベツネ路線の提示で、スペースの大きさ以外は特に目新しいものではない」(『週刊文春』「新聞不信」2011年1月13日号)との酷評も。

 それにしても、読売、朝日の2大新聞の論調がこれほどにも揃うのでしょうか。はたして、歴史に責任を持つ言論となるでしょうか。

「『いまのさまそれに近きか翼賛の政治思へば背節の寒し』―この歌のような、暗い時代に2度とならぬよう、社論による権力の厳しい監視、各社の建設的争論がもっとあっていい」(田中豊蔵・元朝日新聞取締役論説主幹「KNOWLEDGE」2011年1月5日)との言葉を担当者には噛(か)み締めてほしいとしみじみ感じた正月でした。

 大味な主張の全国紙の社説に比べ、地方紙にはキラリと光る主張を散見できます。今年は統一地方選挙の年であり、自治のあり方を問う論調が目立ちました。

 「人任せにしない『自治』の精神をバネに世直しに挑みたい」「人を育て人を活かすためにエネルギーを注ぐ。それが北海道の元気と魅力を増す出発点になる」(北海道新聞)。

「地域から問う自治」「統一地方選は『脱お任せ民主主義』へと歩を進める好機である」(中國新聞)など。

 もう1つ。国内総生産(GDP)世界第2位の座を日本が中国に奪われたことも取り上げられ、今後の日本について論じています。

 明治政府の岩倉使節団の欧米視察では、大国だけでなく、オランダやデンマークなどの「小国」に関心を示していたとする研究を紹介し、「岩倉使節団が見た『小国』の在り方を今日の日本に重ねてみたくなる。もはや大国主義は時代遅れだ。『小国』が連携し、知恵を動かすことで平和を守る道を探りたい。日本の新しい選択肢ではないだろうか」(京都新聞)とは卓見。

 「脅威や懸念には米国など同盟国、周辺国と連携し現実的に対応しながらも、平和国家の理想を高く掲げ決しておろそかにしない。そうした国の在り方こそ、世界第2位の経済大国の座を中国に譲っても、日本が世界から尊重され続ける道ではないでしょうか」(中日新聞・東京新聞)。

 年の初め、このような国のいき方が、中小企業憲章の実現の方向と共鳴し合う道のように思えてきました。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2011年 1月 15日号より