地域に人を残し、地域をつくる共同求人―経営指針、共同求人、社員共育の総合的実践を追求

【変革と挑戦―各同友会の実践事例から】8

 各同友会の実践事例を紹介する「変革と挑戦」シリーズ。今回は、岩手同友会の共同求人活動の取り組みを紹介します。

 岩手県内に通う大学生の8割は、県外に就職します。その背景には、地元の中小企業をほとんど知らないという実態があります。

 岩手同友会の共同求人活動は、岩手に住む1人でも多くの人に中小企業こそが地域を支えていることを伝え、魅力を発信し、「若者たちと共に人間としての生きる喜びを謳歌(おうか)できる企業づくり、岩手づくり」をめざすことを掲げスタートしました。

 2005年、開始当初は5社の参加しかなく、宮城同友会にも力を借り、何とか合同企業説明会(以下合説)開催にこぎ着けました。「うちは即戦力。中途採用しかしないよ」とお付き合いで参加した社長も、自社のブースに座り、真剣なまなざしで見つめる学生に、いつしか経営理念を熱く語る姿に変わっていきました。

 共同求人活動とともに始まった「経営指針を創(つく)る会」も第7期を迎え、「指針を成文化したら、即新卒者を採用、将来に向け共に夢を実現できる人を育てよう」と、経営指針、共同求人、社員共育の総合的な実践が少しずつ実現しつつあります。また一昨年からは念願の同友会大学も創設し、日常の例会とあわせ、5本の活動の柱が動き始めました。

 しかし現実の課題は重くのしかかります。岩手県内には、正規雇用有効求人倍率が0・1倍前後の地域がいくつも存在します。そうした地域からは働く場を求め、若者が1人、また1人と出て行っています。「できることなら地元に残りたい」。合説の総合相談コーナーには、そんな相談が毎回多数寄せられます。

 その声に応えるために、2008年から「新しい仕事をつくり、地域に雇用をつくろう」をテーマに、これまで40回を超える例会や部会を開催してきました。この地道な積み上げが、共同求人活動への参加企業の増加につながっています。

 また高校生就職課外講座や職場体験、定期的な学校訪問、地元大学とコラボで取り組む社長と先輩社員を囲んでのキャリアミーティングの開催など、細やかな学校や学生との関わりが、親御さんの企業への理解や毎年増える合説への学生数に現れています。

 共同求人活動は人を地域に残し育て、地域を創る壮大な運動です。中でも岩手のような中山間地帯が8割以上を占める地域での役割と責任は、今後ますます大きくなります。1社でも多くの企業が共同求人活動に関わることが、若者の未来、岩手の地域の未来を拓(ひら)くことになります。

「中小企業家しんぶん」 2011年 3月 15日号より