同友会の絆で企業復興と地域再生を

福島同友会相双地区総会に参加して

 大震災と原発事故で開催が遅れていた福島同友会相双地区総会に参加しました(本紙次号で詳報)。

 6月3日の総会当日は、郡山駅から会場のある南相馬市まで約100キロの道のりを車で移動。阿武隈山地を越えて太平洋岸の浜通り地域に抜けました。対向車線を「災害派遣」の看板を付けた自衛隊の車両が次々と通ります。

 途中、高い放射線量が検出されて計画的避難区域に指定された飯館村も通過。車窓からは山間ののどかな田園風景を望めますが、点在する家のカーテンは閉められ、人の気配はしません。

 南相馬市原町区の会場には地元で事業を継続している会員だけでなく、福島市や仙台市などに避難していた会員も駆けつけました。南相馬市は原発事故後、7万人の人口が2万人程に減少し、現在は3万5000人程まで戻っているとのこと。3月11日以降の挨拶は、「生きてたの」から始まって、「どこへ行ってたの」、「何していたの」と続き、「これからどうなるんだろうね」で終わるのがパターンになっているそうです。

 相双地区には、会員91名中、原発から20キロ圏に18社、20キロから30キロ圏に53社が所在し、閉鎖した事業所も多く、家族、社員ともども避難を余儀なくされました。南相馬市は現在、警戒区域、計画的避難区域、緊急時避難準備区域、それ以外の4つに分断されています。

 総会では、避難などで離ればなれとなっている会員とも連絡を絶やすことなく、復興委員会を中心に活動を進めることを確認。そして、「同友会活動、その全てが企業復興と地域再生に向けての活動になります」と強調しました。

 震災直前に入会した会員から「震災のすさまじい混乱の中でも、同友会に入会したことにより、さまざまな情報や会員さんからの温かい励ましを頂くことができた。同友会に入って本当によかった」との話が紹介されたことも印象的でした。

 総会の特別企画では、「原発事故への対応と今後の課題」について弁護士が講演。質疑応答では質問が次々と出され、時間オーバーでも収まらないほど。被災状況を反映した切実な質問ばかりで、質疑応答のやり取りを聴いているだけでも、原発災害の実相をリアルに知ることができました。

 重大な論点として、福島第一原発の事故は過去にない規模であり、膨大な訴訟が起こされた場合、裁判所が対応・処理できなくなる可能性がある問題が浮上しました。弁護士会では裁判外紛争処理制度(ADR)を拡充して対応すること等が議論されているそうです。

 質疑応答は次第に意見交換の場となりました。東京電力は上限250万円の仮払い補償をスタートさせたが、原発事故が終息しない現状では救済の見通しが立つのはかなり先のことだ。訴訟の準備は進めつつも、司法分野だけに頼らず、新しい制度をつくるしかない。

 最後は、他団体も含め仲間と共に力を合わせて企業復興と地域再生の運動に取り組むしかないという結論に至りました。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2011年 6月 15日号より