【経済データを読む】心臓疾患などの労災補償状況

 厚生労働省は、2010年度の「脳・心臓疾患および精神障害などの労災補償状況」を発表しました。くも膜下出血などの「脳血管疾患」や、心筋梗塞などの「心臓疾患」は、過重な仕事が原因で発症する場合があり、「過労死」とも呼ばれています。厚生労働省では、こうした過労死や、仕事のストレスによる精神障害の状況について、労災請求件数などを公表しています。

「過労死」など、脳・心臓疾患に関する事案の労災補償状況では、労災補償の「請求件数」は802件で、前年度比35件の増。4年ぶりに増加に転じています。「支給決定件数」は285件(同8件の減)で、3年連続の減少。 業種別(大分類)では、請求件数、支給決定件数ともに、多い順にみると「運輸業、郵便業」(182件、78件)、「卸売・小売業」(132件、53件)、「製造業」(118件、35件)となっています。

 精神障害などに関する事案の労災補償状況は、労災補償の「請求件数」は1,181件(同45件の増)となり、2年連続で過去最高。「支給決定件数」も308件(同74件の増)で、過去最高となっています(表)。業種別(大分類)では、請求件数、支給決定件数ともに、「製造業」(207件、50件)、「卸売・小売業」(198件、46件)、「医療、福祉」(170件、41件)の順。精神障害等の支給決定した案件を「出来事の類型」で分類すると、「対人関係のトラブル」(65件)、「事故や災害の体験」(48件)、「仕事の失敗、過重な責任の発生等」(44件)の順となっています。

 経済構造の変化などに加え、東日本大震災の影響もあり、働く人の心身的な負担が大きくなっていると言われています。社員の「心と体の健康」に一層配慮することが企業にとっても大きな課題となっています。

表 精神障害等の労災補償状況(厚生労働省)

表 精神障害等の労災補償状況(厚生労働省)

「中小企業家しんぶん」 2011年 6月 25日号より