【元気印の企業訪問】やんばる島豚を世界のブランドに

(有)スーチューマー 社長 満名 匠吾(まんなしょうご)氏(沖縄)

 「やんばる(注)島豚を世界に誇れる本物のブランドにしたい」―沖縄初の島豚料理専門店「満味」は、黒豚「アグー」のながれを引く「やんばる島豚」を使用し、独自の料理法で提供しています。沖縄では豚肉に関して、「鳴き声以外捨てる部位が無い」と言われるほど豚肉が地元料理として根付いています。

 (有)スーチューマーの満名匠吾社長は、8年前に「島豚七輪焼『満味』」をオープンし話題となり、ランチを取り入れた2店舗目の「BUTANO KINOBORI(豚の木登り)」は名前もユニークで、若者に人気のオシャレなお店となっています。

 満名社長は沖縄県北部の本部町出身で、祖父に連れられての畑仕事などで沖縄の自然を無意識に体感するうちに、次第に自分の中であることが芽生えてきました。それは、変えてはいけない沖縄らしさ。その優しさや強さを守るという強い想いが、島豚との出合いで具現化します。

 大阪や東京で商売の修行を積み、琉球在来豚「アグー」というブランドの本質を求める姿勢が、地元の生産者や販売店との信頼関係を築き上げました。

 「アグー」は、小型で肥育日数が長く生産性が悪いという点で、戦後導入された成長が早く大型な西洋豚におされて消滅しかけましたが、名護博物館と北部農林高校が手を組み、わずかしか残っていなかった琉球在来豚アグーを集め、長い年月をかけ、戻し交配をし現在に至ります。

 やんばる島豚は、この琉球在来種の高級ブランド豚「アグー」と「黒豚」を交配させて作り出した豚です。アグーの特徴である旨味と脂身の厚さが、黒豚と交配させることによって、さらに食べやすくなりました。最大の特徴は、やわらかく甘みのある肉であるにも関わらず、低コレステロールで口あたりがとても上品だということ。また、栄養価もとても高く一般の豚と比べてグルタミン酸、オレイン酸、ビタミンB1などが豊富に含まれています。

 品質にこだわった上質なやんばる島豚を、付き合いの長いやんばるの畜産農家から直接仕入れています。その畜産農家のこだわりも半端ではありません。やんばるのミネラル豊富な天然水と、小麦、ヨモギ、海藻、ニンニク、サンゴ粉などを混ぜた独特のエサを与え、耳のタグで成長管理した上で、農場での母体より一貫生産しています。 「信頼できる畜産農家があるからこそ、自信を持って最高の豚肉が提供できる」と満名社長。

 やんばる島豚の上質な脂身は、とろけるような旨味をもっており、その醍醐味を存分に味わえるのがカルビやネギ豚舌などを盛り合わせた「備長炭の七輪焼き」です。

 築120年の民家を移築した「満味」の店内は、古民家ならではの天井の高さがあり、各テーブルには七輪が用意されています。七輪で焼くことで炭の香りを肉に凝縮させるので、美味(おい)しさが引き立ちます。また、海外の調理方法も取り入れ、アイデア、創作料理も提供しており、シーズンには8割にもなるという観光客にも好評です。

 「戦後、海外にいたウチナンチュ(沖縄の人)の支援で息を吹き返した豚文化。その恩返しを含めて、やんばる島豚を世界に誇れる本物のブランドにしたい」。満名さんの夢は膨らみます。

(注)やんばる(山原)とは、沖縄本島北部(国頭郡恩納村以北)をさします。

【会社概要】

設立 2008年
資本金 200万円
業種 飲食店
社員数 20名(うちパート・アルバイト16名)
所在地 名護市字伊差川
URL http://www.manmi-shimabuta.com/
TEL 0980-53-5383

「中小企業家しんぶん」 2011年 11月 15日号より