いま、思うこと―震災復興、私の決意

【〈シリーズ〉復興―我われが牽引する】

「DO! 同友ふくしま」3月号と4月号から、シリーズ「いま、思うこと―震災復興に思うこと」より3名の寄稿を紹介します。

『希望の灯(あか)り』を燈(とも)す活動

(株)デンカ コム 島村 守彦氏(いわき地区)

 阪神大震災の経験により、1度の人生悔いなく生きようと決意しサラリーマン時代に転勤で訪れたいわき市にIターンし独立開業をした私が、この地で再度大震災に遭遇(そうぐう)するとは夢にも思いませんでした。

 今回はさらに原発事故が重なり、避難地域に商圏を持っていた当社は多大な被害を受けました。でも真っ先に思い浮かぶのは、避難地域にお住いだったお客様の顔でした。お客様が戻られる日まで、この場所で頑張ろうと決意しました。

 当社は被災した地域の皆さんに希望の灯りを燈(とも)すべく、微力ではありますが、得意分野の自然エネルギーシステムを生かして、いわきの復興に寄与したいと考えています。

 メガ・ソーラーも良いですが、被災地区の住民による手作り太陽電池による発電所を作れば、避難されている方や障害者の仕事にもなり、地域産業の育成、子供たちにも希望を与えられるのではないかと活動しています。

 「同友会発電所を被災地の人たちの手作りで!」そんなことを考えて取り組んでいます。

福島だけに与えられたチャンス

入谷建設工業(株) 代表取締役 入谷 康之氏(会津地区)

 震災から1年が過ぎましたが、地元紙には原発、除染、賠償、補償など、依然として連日紙面を大きく占めています。

 私も今なお福島県に起きている事態の深刻さと、先行きの見えない不安に胸を痛め続けています。会津地方においても風評被害は深刻で、主要産業である農業、観光業の打撃は計り知れません。

 このような状況の中、青年経営者の仲間と風評被害について考えるきっかけがありました。そこで見出した結論は1つ。「震災をチャンスに変えなければならない」ということでした。

 今までと同じやり方が通用しないのであれば、それを変えてみる、お店でお客が来るのを待っていたなら商品を自ら売りに出てみる、新たな商品づくりに挑戦してみる、業態を変えてみる、新たな販路を見出してみる、仕入先を変えてみるなどです。さまざまな新たな取り組みをスタートするきっかけとしてチャンスに変えればいいのです。

 苦しい状況だかこそ、そこから柔軟な発想と決断力、行動力をもって困難を乗り越えることが、私たち「福島の経営者だけに与えられたチャンス」なのではないでしょうか。

 将来、この福島県から全国に力強く発信する企業や経営者が生まれてくると私は確信しています。

箱に残った希望

アース(株) 専務 清野 智之氏(福島地区)

 大きな揺れ、そして吹雪。未来を見失いかけたあの日。多くの尊い命がこの世を後にした。残された私たちは放射能に翻弄(ほんろう)され、何が正しいことなのか分からずに、「安全だ」「危険だ」とぶつかり合った。

 私は太陽光発電というエネルギーの仕事に携わりながら、ギター弾き語りをしてきた音楽活動家でもある。

 人の役に立ちたくて、情報発信、自然エネルギーの講演会、音楽ライブと迷いながらも積極的に動いた。

 動いていると仲間が集まる。パンドラの箱に残った希望のように、福島にはさまざまな夢が芽生えていた。箱に残った希望には、「希望を持つと裏切られて不幸になる」との解釈もある。

 しかし、答えがないから人生は面白い! 私は希望の残った箱を開け、夢に溢(あふ)れた福島で挑戦を続けたい。さぁ行こう! 福島!

「中小企業家しんぶん」 2012年 5月 15日号より