【経済データを読む】消費税を考える

 消費税引き上げを柱とする社会保障と税の一体改革が今回の国会最大の問題になっていますが、消費税が1989年に導入されてから日本の税収にどのような影響を与えたのかをデータで確かめてみました(表)。

 消費税は1989年に税率3%で導入され、1997年に税率5%に引き上げられ現在に至っています。89年から96年まで消費税の税収はバブル崩壊を受けても民間最終消費支出の伸びに応じて、順調に少しずつ伸びてきてはいました。しかし、97年に5%に引き上げられると民間最終消費支出がほとんど成長しなくなり、税収は10兆円前後で止まっています。一方肝心の税収全体ですが、バブル崩壊で落ち込んでいき、5%へ引き上げた97年の53.9兆円を起点に、それ以来減少傾向にあります。法人税や所得税の減税など理由はいろいろありますが、5%に引き上げたことで個人の消費が伸びなくなったことも大きな要因です。

 家計でみれば、1世帯当たりの月の消費支出はバブル崩壊後大きくは減らず、5%導入後から減ってきていることがよく分かります。

 今回消費税率を10%に引き上げ、20兆円を捻出すると提案されています。しかし、本当に10%にしたら20兆円になるのでしょうか。5%に引き上げた時の経験から考えてみれば税収は減ることも考えられます。

 参考に民間最終消費支出にだけ消費税率をかけたらどのような税額になるのかを載せていますが、そうすると2011年の場合、7%強の税率で約20兆円に達します。消費税による税収増加と同時に、10%という税率の根拠も不明確と言えます。

表 消費税導入後の日本の税収

「中小企業家しんぶん」 2012年 5月 25日号より