Ⅰ 経営者の責任 (4)自社の経営の主要数値の正確な把握

【社員とともにめざす企業像へ変革を~企業変革支援プログラム ステップ2】6

 経営者の通信簿は「決算書」です。経営活動の結果は、財務体質(数字)に正直に表れてきます。よくがんばったといくら言っても、成績が悪ければ勉強の仕方に問題があるように、結果として会社の財務が改善しなければ、やり方(戦略・戦術)を変えないといけません。「経営を維持し発展させる」とは、数値からいえば、財務体質の継続的な改善だと言えます。

自社の財務分析をする

 企業変革支援プログラムステップ1では、「自社の立ち位置を明確に」とあります。数値面から立ち位置を知るのが財務分析です。当然ながら、金融機関や企業信用診断(調査)の評価の基本でもあります。

 財務分析の基本は、「収益性」「安全性」「生産性」です。それらの主な指標は、企業変革支援プログラムステップ2の47ページに例示してあります。大切なのは、これらの数値のどれを重視し、経営実践によってどう改善していくのかを経営指針にも明示し、成果を上げることです。

 企業プロフィールのわが社の経営資源に関する確認の項目に、「自社の財務状況(自己資本、利益率、生産性、労働分配率等)に問題はないですか」との問いがあります。自社にとって「問題がない」とは、どういう状態を指すのか、その数値を持たないと、それに近づくためのやり方(戦略・戦術)も明確にはなりません。戦略・戦術(計画)の明確化と目標数値の明確化は表裏一体です。会員の方の経営指針を拝見していて、そこがうまくリンクしていない指針書になっていることがありますので、再度チェックしてみて下さい。

中小会計要領(中小企業の会計に関する基本要領)

 2012年2月に中同協も関わった「中小企業の会計に関する基本要領」(中小企業庁)が公表されました。中小企業の実態に配慮して、税制との調和や事務負担の軽減を図る観点から必要と考えられる項目に絞って簡潔な会計処理などを示しています。また、これを活用することにより税務の把握や経営改善、金融機関との信頼関係にもつながります。

兵庫同友会事務局長 内橋秀明 (企業変革支援プログラム検討プロジェクト委員)

「中小企業家しんぶん」 2012年 8月 15日号より