【経営労働委員会・問題提起】経営指針成文化運動のあるべき姿とは~中同協経営労働委員長 大野 栄一氏

各同友会実態調査より

 8月31~9月1日に行われた中同協経営労働委員会での大野栄一中同協経営労働委員長の問題提起要旨を紹介します。

 経営指針成文化の状況について各地の情報を集め、活動を整理しようと経営労働委員会でアンケートをとりました。

 経営指針成文化の取り組みは「道場形式」(参加者とのやりとりが非常に多い)と「セミナー形式」(先生が教える時間が長い)の2つに大きくわけることができます。2010年のアンケートでは、全国では「道場形式」が60%、「セミナー形式」が40%の割合で行われています。その中で指針が完成するのが「道場形式」で80%、「セミナー形式」では60%。そして指針を実践しているという人が「道場形式」で50%、「セミナー形式」では40%です。八嶋元副委員長はこのデータから2つの提案をしています。1つはチェックシートによる各同友会の指針セミナーの質の向上です。もうひとつが成文化のロードマップの作成。作成から実践そして継続へと続く道の見える化を提案しています。

 今回は各同友会の成文化の取り組みについて細かくアンケートを取りました。受講生数では大阪(5ブロック350名)・福岡(セミナー64名・あすなろ塾121名)・兵庫(79名)が多く、とくに大阪の取り組みが注目されます。参加費については1000円から20万円まであり、成文化の位置づけが現れています。

 作成後のフォロー体制は「企業変革支援プログラムで実践を検証」「指針発表会の開催」などが中心です。実践できていない人へのフォローでも「運営委員などとして参加してもらいながら励まし合う」などが行われています。また、セミナーの中で社員とつくる仕組みが「ある」は27%、「ない」が55%となっており、これはどうにかしないといけない問題です。実践運動の課題・課題解決の方針については、「企業変革支援プログラムの活用ができていない」、「労使見解の精神に基づく成文化がなされていない」、「フォロー体制の構築がされていない」などがあげられており、各同友会でどこに問題意識を持っているかが特徴的に表れています。

 また、先日行われたDOR100号記念シンポジウムの資料(2面参照)の経営指針の有無別業況判断では、経営指針が無いと業況判断がマイナスに、経営指針によって見通しを持っている会社の業況判断はプラスに向いています。さらに、経営指針を社外に公開したという企業だけ業況判断・業況水準共にプラスを示しています。いかに経営指針が企業のモチベーションを上げているかの証拠になっていると思います。

 最後に、どのように経営理念が業績に反映されていくのかと聞かれることがあります。私は理念が戦略に、理念が商品開発につながっている会社が業績に反映されていると思います。やはりそういった会社は差別化に成功しています。別物の理念では答えが出ないのです。別物の理念によって間違った方向へ進んでいる人を正すようにフォローしていくことが私たちの役割だと思います。

「中小企業家しんぶん」 2012年 10月 5日号より