家計の金融資産から見えるもの

 日銀の資金循環表で2012年6月末時点における家計の金融資産は約1,515兆円と発表されました。(表)

 日銀のQ&Aでは「本当にそんなに沢山あるのでしょうか」の質問に対して「誤差はせいぜい数十兆円でかなり確度の高い数字であると考えられます。ただし、資金循環統計の定義上、金融資産のなかに、企業年金・国民年金基金等に関する年金準備金、預け金など、通常個人が必ずしも金融資産とは認識しない金融商品が含まれている。これを全て控除すると、家計は1,260兆円の金融資産を保有していることになります。家計の金融資産には、純粋な個人金融資産だけでなく、個人事業主の事業性資金も含まれているなど、割引いて考えた方がよい点があるのも事実です」と答えています。この事業性資金が使える金融資産ではないのは、個人企業の預金も借金担保分も含んでおり自由に使えるお金ではないからです。

 実際にはどれほどの金融資産があるのでしょうか。同じ日銀の金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査」(10月31日発表)によれば、単身世帯の金融資産は平均で700万円。2人以上世帯の金融資産の保有量の平均は1108万円となっています。しかし、驚くべきは単身世帯では中央値(※)100万円で、平均以下は75.8%(うち金融資産を保有していない世帯が33.8%)となります。2人以上世帯では中央値450万円で平均以下は61.7%(うち金融資産を保有しない世帯が26.0%)となっています。

 家計の金融資産をもっと活用しろという声が多くありますが、これではほとんど使えないのが実情です。企業として狙うのは単身世帯の2割、2人以上世帯でも3割の人しかターゲットにならないということを表す数字です。

 (※)中央値とは、数字を多い順あるいは少ない順に並べた際の真ん中・中位に値する数字。

個人の金融資産

「中小企業家しんぶん」 2012年 11月 25日号より