【2012年度共同求人活動から】若者とともに地域と中小企業の未来を切り拓(ひら)こう

学生の就職活動の早期化・長期化が社会問題となる中、日本経済団体連合会が「採用選考に関する企業の倫理憲章」を改訂し、大手企業などの採用活動が2011年12月からのスタートとなった2012年度。各同友会で取り組まれた共同求人活動の特徴を振り返ります。

求人・就職活動の動向

 2012年10月の有効求人倍率は0・80倍で、昨年よりは上昇したものの依然として低い水準で推移しています。

 2012年3月に大学を卒業した学生の就職率は63・9%と前年より2・3%上昇しましたが、学生にとっては厳しい状況が続いています。大学卒業者約56万人のうち、「正規の職員等でない者」、「一時的な仕事に就いた者」及び「進学も就職もしていない者」を合算すると12万8000人。これらの安定的な雇用に就いていない者の卒業者に占める割合は、22・9%となっています。若者にとって卒業後の社会生活に希望を持てない状況が続いています。

 各同友会が開催した合同企業説明会の参加企業数は述べ1912社(前年比115%)、Jobway参加企業は732社(同109%)と、ともに増加しました。

 一方、合同企業説明会の参加学生数は延べ1万5494名(同77%)、Jobway登録学生数は3万9420名(同64%)となりました。2008年のリーマンショック後の就職難の中で、学生の合同企業説明会参加数、Jobway登録学生数はここ数年大きく伸び続けてきましたが、今年は減少に転じました。大手企業の求人増や、2013年卒から2カ月遅い採用活動になったことで企業の選考活動が集中し、学生1人当たりの就職活動量が減っている影響なども指摘されています。

採用と経営指針、社員教育の連携を

 各同友会では共同求人の意義などを改めて明らかにしながら参加企業を増やす努力が続けられました。

 多くの同友会では、共同求人と経営指針、社員教育などの活動の連携を図りながら活動を強化する取り組みが進められました。関係する委員会の合同会議を定期的に開催したり、合同学習会・連続セミナーの実施、活動への相互参加、報告者の相互派遣を行うなど、関連する委員会の連携強化の取り組みが広がりました。

 広島同友会は、「共同求人活動は企業革新の運動であり、地域経済活性化の運動であり、同時に中小企業の魅力と役割を社会に訴える運動である」と位置付けて長年地道な取り組みを続け、100社を超える参加企業を維持しています。

 宮城同友会では、2011年12月の全国共同求人交流会などを通じて共同求人活動の意義が会内に広がり、新卒採用の実践を語る会員も増加。参加企業が県内に広がりました。

 共同求人活動を新たに開始する同友会や、休止していた同友会が再開し、共同求人活動を再構築しようという動きがいくつかの同友会で見られるのも今年の特徴です。

行政・学校との協力・連携

 北海道同友会は中小企業庁の委託事業として「地域中小企業の人材確保・定着支援事業」を実施。宮城同友会は仙台市産業振興事業団と雇用とキャリア教育に関する協定を締結するなど、行政・関係機関とともに地域の雇用を守り、地域の将来をつくっていこうという取り組みも進みました。

 大阪同友会では、府立高校長との懇談を契機に求職・求人という垣根を越え、「ともに地域に存在するもの」としてのあり様を探る方向が発展してきています。教育機関との関係が「求職と求人」という関係から、「連携」へと変わりつつあり、その視点から新卒求人へとすすんでいく経験も生まれてきています。

 学生に「働くこと」の意味や中小企業の役割・魅力を伝える取り組みもさまざまな形で行われました。インターンシップ、企業見学バスツアー、「3日間の社長弟子入りプロジェクト」、授業への講師派遣、学内合同企業説明会への協力、就職ガイダンス、「就職なんでも相談会」、「Job STUDY」など、学生がサイト上の情報だけでなく、実際に企業に触れることで、学生が自らの労働観・就職観などを確立することを支援しました。

採用・就職活動の早期化・複雑化の是正を

 2月に行われた中同協共同求人委員会では、学生を招き「学生の視点から見た就職活動の現状と問題点」などを学びました。採用・就職活動が早期化・複雑化する中、多くの学生が「何をやりたいのかわからない」など悩みを抱え、最終面接で何度も落とされた学生は、「社会から必要ないと言われているようで、とても傷つく」など、苦しみながら就職活動に取り組んでいる様子が伝えられました。

 また同友会として中小企業に対する認識をどう正しく世の中に広げていくかが重要であることなどが論議されました。

 9月の中同協共同求人委員会では、「共同求人の意義・原点を改めて考える」をテーマに論議し、共同求人の意義を改めて確認するとともに、ブロックでの連携を強化しながら共同求人活動を広げていくことが話し合われました。『人材育成で企業の活性化を~共同求人活動のすすめ』の改定版(第4版)も発行されました。

 7月2日には中同協共同求人委員会として厚生労働省・経済産業省を訪問。共同求人活動についての紹介を行うとともに、採用・就職活動の早期化・長期化是正などについて懇談を行いました。

「人を生かす経営」をすべての活動の柱に

 11月15~16日に愛知で開催された第3回人を生かす経営全国交流会〔中同協4委員会(経営労働・社員教育・共同求人・障害者問題)合同企画〕には1308名が参加。「今こそ、この厳しい経営環境に経営者が社員とともに立ち向かい、若者に中小企業の魅力を伝え、地域に若い人材を残すために新たな仕事づくりで雇用を維持・創出し、『人を生かす経営』をすべての同友会活動の柱に据えて学び実践していきましょう」と呼びかけたアピールを採択しました。

 予断を許さない経営環境が続いていますが、このアピールで掲げた企業づくりや地域づくりに果敢に取り組み、若者とともに地域と中小企業の未来を切り拓いていきましょう。

「中小企業家しんぶん」 2012年 12月 25日号より