「かゆいところに手がとどく」企業とは

下請中小企業はどう国内生産のみで存続を図るか

 大企業を中心とした海外シフトは進んでいます。特に、電気機器及び輸送用機械(自動車)の2012年度の海外現地生産比率(実績見込値)は、それぞれ26・8%、25・8%です。

 一方、中小企業による海外拠点の設置は低い水準にとどまっています。中小企業基盤整備機構「平成23年度中小企業海外事業活動実態調査」によれば、海外直接投資を行っていない中小企業のうち、80・1%の企業が「海外直接投資の必要性を感じていない」と回答しています。

 個々の判断に任せるしかありませんが、大手メーカーと下請中小企業の認識のギャップを垣間見ざるを得ません。

 もちろん、すべての中小企業に海外直接投資を第1に考えよ、ということではありません。問題は大手メーカーの要求する品質やコストの意味が違ってきていることです。

 下請中小企業は単なる「技術力」を持っているだけでは不十分であり、真に固有の「尖った」技術、他社ではできない特殊技術を持つことが求められています。

 また、工程数を削減したり同じ工程数で精度を高めたりする川上から川下まで「かゆいところに手がとどく」総合力も要求されてくるところです。

 それを整理したのが、『国内生産拠点のみで事業存続を図る下請中小企業の戦略』(日本公庫総研レポート、2013年7月10日)にまとめられています。

 国内生産拠点のみで存続を図る11社が紹介されていますが、同友会会員企業も入っています。この事例から4つの領域を抽出し、頭文字から「3Q+C」とまとめています。

 つまり、「高品質」「少量多品種」「短納期」「低コスト」です。

 「高品質」とは、高精度(海外で対応できない超精密・高精度加工)、高品質保証(検査体制やトレーサビリティー体制によって保証された高品質)、作り込み(現場力による設計変更の提案やすり合わせが必要な製品、試作品)です。

 そして、「少量多品種」と「短納期」(海外で対応できない超短納期生産)。

 「低コスト」が、運送費(運送費を考慮すると国内の方が安い製品)、工数(発注・組立コストなどを考慮すると国内の方が安い一貫生産や、産業集積を活用した企業連携によるユニット納品)、画期的低コスト製法(海外よりも安い画期的な低コスト製法)となります。

 競争優位を発揮し得る領域が8項目抽出できますが、11社の例では最低で2項目のマル、通常で5~7項目のマルが付いています。

 日本の下請中小企業の一部は、限られた領域において、国内での需要が引き続き存在していることに気づき、そこで打ち勝つための競争力を構築しています。

 大手メーカーに頼るのではなく、逆に頼られるパートナー的存在となっています。

 工夫次第で国内生産拠点のみでの存続が可能となることを指し示しています。勇気づけられるレポートです。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2013年 8月 15日号より