各同友会・中同協 影響調査【消費増税】中小企業への悪影響は必至

求められる中小企業の立場にたった税制と転嫁対策

 安倍政権は「足元の日本経済は“三本の矢”効果で回復の兆し」を見せているとして、2014年4月から消費税を8%に上げることを決めました。これと前後する形で各同友会と中同協では「アベノミクス」と消費増税の影響について調査を行いました。その結果からは、「アベノミクス」は中小企業に景気回復をもたらしているとはいえないこと、消費増税によって多くの中小企業が悪影響を被ることが明らかになりました。増税の延期・中止を含め、中小企業の立場にたった税制を求めると同時に、どんな経営環境の変化にも対応できる企業づくりの努力がいよいよ重要になっています。

 増税が実施された場合でも、転嫁対策等が中小企業の立場にたって実施されることが求められます。

「アベノミクス」半数が自社業績に影響なし

 中同協7~9月期景況調査(DOR)で「アベノミクス」が自社の業績にどのような影響を与えたか尋ねた項目では「好影響があった」のは25%にとどまる一方、「影響なし」が53%と過半数にのぼり「悪影響」は22%でした(図1)。「アベノミクス」の効果を実感している中小企業は一部にとどまり、多くの企業には効果が及んでいないことが浮き彫りになりました。

 「アベノミクス」の実感は業種ごとに見ると、総合工事業(官公需中心、民需中心の両方)、鉄鋼・非鉄金属製造業、不動産・物品賃貸業が「好影響」を実感している一方、食料品等製造業をはじめとした製造業、運輸業では「悪影響」が実感されています(図2)。建設業等で「好影響」が実感されていますが、「これまで冷え込んでいただけに公共事業の大型財政出動に対する過剰反応」という声も聞かれます。他方、製造業と運輸業では「異次元の金融緩和」と円安にともなう輸入原材料価格上昇で採算が圧迫されており、むしろ「悪影響」を強く感じています。

7~8割が消費増税で業績悪化を予想

 こうした中、決定された消費増税の影響については「景気の後退」を想定する企業が43%、さらに「利益の減少(39・5%)」、「売上高の減少(38・7%)」が続き、約4割は景気後退と同時に自社の売上・利益が減少する悪影響を予想しています(図3)。

 「駆け込み需要の発生」を見込むのは33%と3社に1社にとどまりました。さらに各同友会の調査結果ではもっと深刻な悪影響があると見込まれています。

 愛知同友会と中日新聞が合同で実施したアンケートでは消費増税後に業績が「悪くなる」が7割近く(図4)、中同協九州・沖縄ブロックが実施したアンケートでは「悪影響が出る」が8割以上(図5)となりました。大多数の中小企業が悪影響を想定し、自社もその影響を免れないと予想されています。

 各企業で消費増税後の対応が既に検討されています。

 京都同友会が実施した景況調査(特別調査)では増税分を「販売価格に転嫁」する企業は53%、「消費税転嫁の方策を模索」は28%でした(図6)。愛知同友会のアンケートでも「販売価格に転嫁できる」は52%にとどまり、22%は「できない」と答えました(図7)。半数の企業は増税分を自己負担せざるを得ないと見ています。

転嫁対策等、中小企業の立場にたって実施を

 こうした結果を受けて各同友会は見解を発表しています。

 京都同友会は地元紙の取材に応えて、価格転嫁問題について「取引における“力関係”も含めて価格転嫁に困難を感じている中小企業も多いのが実情」として「消費税転嫁対策特別措置法」の厳格運用を求めています。

 中同協九州・沖縄ブロックは「九州・沖縄の中小企業経営者のアピール」として消費税アップ8%、10%のおのおの1年延期、大企業との取引に際し消費税分を必ず転嫁させるよう厳しく監督することや消費税分を転嫁できるよう外税方式の徹底を通じて「赤字の中小企業への対策としてセーフティネットを再整備すること」などを求めています。

政府は「中小企業憲章」に基づき中小企業の声を聴き、中小企業の置かれた実態を踏まえた施策の実施が求められます。

「中小企業家しんぶん」 2013年 11月 5日号より