モニタリング手法や個人保証制度の見直しなど着実に実現を

【金融庁「業務説明会」の特徴と同友会の対応】

 中同協は9月中旬から10月中旬にかけて、金融庁による「業務説明会」が47都道府県すべてで同友会が参加することを確認し、自らも懇談しました(本紙10月5日付既報)。すべての県で同友会に参加要請が来るのは初めてのことです。愛知と北海道の様子は既報(本紙10月5日付)のとおりですが、業務説明会でどのような点が変わり、当会の態度はどうなのかを述べます。

 中同協政策局長 瓜田 靖

モニタリング手法の見直し

 愛知同友会の指摘にあるように、業務説明会は金融機関に対するモニタリング方針の変更から入りました。

 従来の検査は、法令や金融検査マニュアルで規定した基準を満たしているかについての検証が中心でした。それが、今後の検査は、金融機関・金融市場で何が起こっているかを、リアルタイムで実態把握するとか、業界横断的な実態把握・分析、課題の抽出、改善策の検討を行うといった、より現実的な実態把握に重点が置かれています。

 したがって、モニタリング手法の見直しとして、融資審査における事業性の重視と小口の資産査定に関する金融機関の判断の尊重を掲げています。これは、同友会の主張してきた趣旨そのものです。

 モニタリング手法がこの方向で見直されることが期待されます。

小規模事業者への経営支援

 北海道同友会の守代表理事の言うように、小規模事業者には地域金融機関は目線を下げて実態に即した経営支援を望みたいところです。そのためには、もっと現場に足を運び、経営者の話に耳を傾けてほしいわけですが、前述のモニタリング手法が発展することが望まれます。

 国としても、第1弾は「小規模企業活性化法」が成立し、中小企業基本法の基本理念に小規模企業の意義が書き込まれるなどしました。そして、第2弾が「小規模企業基本法」の制定です。同友会としては、中小企業憲章の精神の前進の中で小規模企業振興を図る方向に変わりありません。

認定支援機関のあり方

 認定支援機関(1万8806機関、10月28日現在)が、経営支援に対するノウハウが乏しく、質の向上が望まれる機関が多いことです。これは、中同協政策委員会でも出され、「認定支援機関のあり方」を問うものとなっています。

 業務説明会では、認定支援機関の経営支援能力の底上げのため、優良事例を共有したり、認定支援機関に対する報告制度の構築を挙げています。地域金融機関も自らが認定支援機関になっているわけですが、有効な経営支援をしているか検証されることが求められます。

個人保証制度の見直し

 個人保証の見直し問題です。法務省の民法改正作業は再来年の改正を目指し、来年7月ころには最終案が出てくる予定です。第三者保証は禁止の見込みですが、経営者保証の原則禁止は全く目途が立っていない状態です。

 個人保証の見直しについては、日本再興戦略にも、「法人の事業資産と経営者個人の資産が明確に分離されている場合等、一定の条件を満たす場合には、保証を求めないこと」などの記述があります。

 現在、「経営者保証に関するガイドライン研究会」(事務局は日本商工会議所及び全国銀行協会)が設置され、年内にガイドラインが出される予定です。

 個人保証履行時において、経営者の手元に残る資産の範囲について、一定期間の生活費相当額、華美でない自宅を残すなどを検討しています。

 法務省の民法改正作業は着々と進められるわけですが、このガイドラインは法律ではないものの、「ガイドライン研究会」には貸し手と借り手の主だった顔ぶれはそろっており、関係者の合意があれば、公的準則になりえるものと思います。同友会としては、ガイドラインを見定めてから態度を決めようと思います。

大きなチャンス

 中小企業憲章の行動指針は、「6.中小企業向けの金融を円滑化する」で次のように述べています。

 「金融供与に当たっては、中小企業の知的資産を始め事業力や経営者の資質を重視し、不動産担保や保証人への依存を減らす。そのためにも、中小企業の実態に即した会計制度を整え、経営状況の明確化、経営者自身による事業の説明能力の向上、資金調達力の強化を促す」

 すべての県で同友会に参加要請が来るのは初めてのことだと述べましたが、モニタリング手法の見直しや個人保証制度の見直しなど同友会にとって大きなチャンスがめぐってきました。着実に1つひとつを実現していきましょう。

「中小企業家しんぶん」 2013年 11月 15日号より