有権者から日常的な主権者へ

元旦の新聞各紙の社説を読んで

 2014年、元旦社説を読む。それは、新聞社の基本姿勢を表明する場です。今年もさまざまな角度から論じられていますが、「格差」などの他に次の4つに共通点を整理できます。

 第1は、憲法。「道しるべは憲法である。憲法は、第2次大戦の敗戦という痛切な教訓が残した遺産である。だが過去の文書ではなく、今後も日本国民の針路を示し、世界に向かって日本の立場を宣言する価値ある最高法規だと、私たちは考える。憲法を前面に、この国のあり方をあらためて問い直していきたい」(北海道新聞)。「安倍晋三首相は昨年の臨時国会の所信表明演説で『戦後68年にわたる平和国家の歩みに胸を張るべきだ』と述べた。…戦後日本の骨格は平和憲法だ。それを誇るなら、なぜ変える必要があるのか」(南日本新聞)。

 第2は、民主主義。多くの国民が「選挙でそんなことを頼んだ覚えがない」という政策が進んだからです。「議論が割れる政策を採るならなおさら、政治は市民と対話しなければならない。…民主主義を『強化するパーツが必要』…そのために住民投票や審議会などの諮問機関の改革、パブリックコメントの充実などを提案する」。「投票日だけの『有権者』ではなく、日常的に『主権者』としてふるまうことを再評価する考え方ともいえる」(朝日新聞)。

「民主主義という木、枝葉を豊かに茂らそう」(毎日新聞)という提起。「その枝葉のひとりひとりに、私たちもなりたい、と思う。『排除と狭量』ではなく、『自由と寛容』が、この国の民主主義をぶあつく、強くすると信じているからだ」(毎日新聞)。

 第3は、ソフトパワー。「世界に影響を及ぼす力がハードだけではなくなっているのも無視できない。国際社会で信頼を得るには、文化や価値観などのソフトパワーが一段と大事になっているからだ。ハードからソフトへのパワー移行も進んでいる」(日本経済新聞)。

「国民は戦争をする軍事国家への回帰など望んでいない。…沖縄は東アジアの緊張を沈静化し、『軍事の要石』から『平和の要石』へ転換する構想を描くべきだろう。沖縄の尊厳と安全を守るために、ソフトパワーに磨きをかけていこう」(琉球新報)。

 第4は、NPO。「兵庫県内では昨秋、NPO法人が2000団体を超えた。福祉・医療、環境、まちづくりなど幅広い分野に及び、41市町すべてに法人がある。…過疎化、高齢化で自治会なども維持が難しいが、都市住民も含めて参加しやすい形で活性化を目指す活動は着実に広がっている。この国は曲がり角にあるのかもしれない。不透明感が増すからこそ、自らを見詰め直し、地域でしなやかに生きていく。そうした取り組みの萌芽(ほうが)を各地で見ていきたい」(神戸新聞)。

 年頭の社説は、私たちに改めて熟慮と覚悟を促しているように思えます。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2014年 1月 15日号より