【中同協4委員会合同研修・委員会 実践報告】

 1月29~30日に行われた中同協4委員会(経営労働・社員教育・共同求人・障害者問題)合同研修・委員会(での実践報告(要旨)を紹介します。

事業継承は組織継承~組織的経営の実践

中同協共同求人委員長 小暮 恭一氏((株)エム・ソフト 代表取締役/東京同友会)


共有は組織の原点

 当社は1987年8月に設立したソフトウェアの受託開発・自社製品の研究開発を事業とする会社です。起業後すぐに経営の勉強をしたいと東京同友会に入会、情報産業部会(現IT部会)を中心に活動し、2年後の1989年から共同求人活動に参加しました。

 起業当初から「良い会社をつくろう」と決意書や理念をつくり、それが現在の社是になっています。経営をする上で非常に重要な価値観でしたが、「自分がわかっていれば社員もわかってくれるだろう」と思い、当時は社員全員で共有する仕組みがありませんでした。企業文化という価値観を社員と共有できたのは同友会で学んだからです。価値観の共有は組織の原点であり、組織とは、企業の中で与えられた役割や進むべき方向を共有し、実践していく職場集団であると考えます。同友会では、共有し実践することの重要性を繰り返し教えられました。

 リーマンショックで受注が減ったとき、当時の事業部長から「事業再生に向けて原点から始めたい」と言われました。原点である経営理念を社員全員に伝えるべく半年かけて教育した結果、社内の活力が向上し、利益を出すことができました。価値観の共有が、組織をひとつにまとめ活力を与える影響力を持つことを知った瞬間でした。

社員にも「経営」感覚を

 社内に組織をつくり経営計画に近い実績を達成できてきたとき、役職者による仕事の抱え込みから大きな損失が出てしまいました。なぜ抱え込みが起きたのか。役職者には職務の教育しかしていなかったのです。また、それまでは経営幹部が経営計画をつくっていたため、社員全員には浸透していませんでした。

 会社を集合体ととらえるならば、それぞれの機能=役割を実践できていれば生きていけます。しかし、役割をこなすという縦の関係だけでなく、横串である「経営」という感覚を付け加えることでその集合体は強くなります。お客様によりよい製品を、と職務一点で進んでしまうと赤字体質になります。「製造原価とは」「利益とは」という「経営」という感覚を、組織の長には身につけてもらわねばなりません。経営者だけが考えるものではないのです。

自ら考える組織へ

 利益を出しにくいこの時代に経営者に求められていることは、同友会の進めている経営指針の大切さを考えることだろうと思います。そして経営計画を実践し、その目標を達成することが重要です。

 目標に到達できないときの乖離(かいり)を埋めるには、(1)徹底的に現状分析し、(2)目標達成にはどういうことが必要なのか洗い出しを行うこと、(3)目標との差をどう埋めていくか分析し、(4)差異を埋める策の検討を行い、(5)その策を吟味(ぎんみ)するという、経営計画の具体化が必要です。経営計画を具体化することで実践が可能になり、目標達成をたぐり寄せることができます。明確な手段を提示できることが必要なのです。

 そして各部門が責任を持ち、社員自らが進め、実績を出すことで、その可能性は高くなります。多少の時間はかかりますが、教育と実践をすることで間違いなく自ら考える組織はつくられます。そして、継続して実践することでつながる組織を生み、だれに対しても引き継げる組織、事業になると思います。

経営指針書の作成に企業変革支援プログラムを位置づける

中同協経営労働副委員長 山田 茂氏((株)山田製作所 代表取締役/大阪同友会)

 昨年の9月26~27日に行われた経営労働問題全国交流会で、大野経営労働委員長が「あてになるのか経営労働委員会!」として、各同友会の企業づくり運動の柱に企業変革支援プログラムが位置づけられているのかと問題提起しました。そこで、大阪同友会の企業変革支援プログラムのe.doyu登録状況を見てみると、登録した人の中で、その後2年間以上登録していない人たちが44%もいました。継続した定点観測が定着していません。

 大阪同友会では自転車で例えていますが、前輪が時代の変化に対応した正しい経営戦略だとしたら、後輪は労使見解に基づく好ましい企業風土です。前輪で舵を取り、後輪が駆動することでしっかりと動くことができます。企業を変革するにはこの二輪で進むことが大切です。皆さんは貸借対照表/損益計算書などの数字にばかり目がいっていないでしょうか。本当は目に見えない部分が大切です。目に見えない部分を企業変革支援プログラムが「見える化」します。

当社の取り組み

 自社の取り組みと企業変革支援プログラムのギャップから自社の課題が見えてきます。

 山田製作所では1泊研修で経営指針の成文化に取り組み、新卒新入社員のOJT・OFFJTのカリキュラムやベテラン社員から若手社員に技能を受け継ぐための伝承塾も開催しています。また、会社の見学来社数はこれまでに2800社以上となり、昨年は22カ国236社が見学、その際には若手社員が案内役を担っています。このように、社員教育の制度など整備してきたと思いましたが、企業変革支援プログラムの結果は私の思いとは全く反対の部分が明らかになりました。

 山田製作所では私と専務と社員、みんなで企業変革支援プログラムに取り組んでいます。カテゴリーⅢ―(2)「共に学び共に育ちあう社風づくり」の点数が高いのに対して、Ⅲ―(4)「対等な労使関係」の点数が低いのです。社員の存在を本当に認めているのかと、ここで悩みます。もしかしたら若手社員の成長が遅いのもこの労使関係が原因にあるのではないかと問いかけられます。社員の目から見た問題がわかります。これは私と専務、そして社員の結果を比較できるからこそわかるのです。そして、山田製作所もまだまだ全社的実践には程遠いレベルであると思いました。

企業変革支援プログラムで課題を明確に

 PDCAの流れからいうと、経営指針書の作成がP、その実践・成果がD、企業変革支援プログラムステップ1で診断するC、結果から課題の抽出をステップ2で行いレベルアップの具体策を導きだすA。企業変革支援プログラムの運用がPDCAサイクルになっています。特にステップ2を利用することで問題が具体的課題へと変わっていきます。

 ここで間違えてほしくないのは、会社を変えるのは経営指針書であるということです。5年10年先の理想像を真剣に追い求める経営指針書ならば、必ず人材計画と社員教育の仕組みが必要になります。そして、将来の経営課題を見極めるために企業変革支援プログラムを活用することがとても効果的ということです。

 昔は経営指針書とは「正統派異端児」でした。しかし、これが異端から真ん中に来ています。次は企業変革支援プログラムを真ん中にして進めていかなければいけません。ぜひとも一緒にがんばりましょう。

「中小企業家しんぶん」 2014年 3月 15日号より