中小企業政策立案の大転換~中小企業庁のポータルサイトで自治体政策を比較する時代へ

 前回、「中小企業振興基本条例をすべての都道府県へ」の続きです。

 前回の「国と地方自治体との政策連携が決定的に重要になっています」という指摘が裏付けられました。4月2日の中小企業政策審議会で中小企業白書とともに資料が出され、説明がされました。

 それによれば、「国、都道府県、市町村がうまく連携できている」と評価する者は少なく(3・2%)、「3者がバラバラに支援している」(23・2%)「連携の実態がよく分からない」(64・3%)と回答した者が9割近くを占めています((株)帝国データバンク)。

 要は全く連携が取れていません。そこで登場するのが、中小企業庁のポータルサイト「ミラサポ」。「施策マップ」なるものを「ミラサポ」に構築するとしています。「施策マップ」とは、中小企業・小規模事業者が必要とする支援制度をさまざまな条件で絞って検索できるようにしようというもの。「比較画面」で検索結果を互いに比較したり、「一覧画面」で国・都道府県・市区町村の支援制度を一覧できます。

 中小企業庁の説明によれば、「いま、構築中です。うちの都道府県・市区町村の支援制度と他県と比較し、見劣りするようでしたら、どんどん文句を言って下さい」と言っていましたが、財政規模も中小企業の集積状況も違う自治体を単純な比較に馴染むものか、どうか。しかし、確実に先進事例と比較することになる時代に入ったのです。

 先進事例の自治体はいいが、カネも人もない自治体はどうすればよいか。地元の中小企業に依拠して政策立案するしかありません。 しかし、ちょっと工夫が必要です。中小企業振興基本条例に加え、中小企業の独自の実態調査と産業振興会議を付け加えた3点セットで中小企業振興のモデルをつくることです。

 このような取り組みは、中小企業政策は市民や中小企業家が主体的に作り上げていくことを示しており、中小企業政策立案方法の大転換です(和田耕治「中小企業基本法改正後の地域中小企業政策」『中小商工業研究』119号)。

 このような大転換を経験している自治体は少なく、まずは中小企業振興基本条例の制定から挑戦してみることが大事です。

 小規模企業振興基本法では、「地方公共団体の責務」として「地方公共団体は、…その地方公共団体の区域の自然的経済的社会的諸条件に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する」と中小企業基本法と同じ表現で「責務」を述べ、2項で「地方公共団体は、小規模企業が地域経済の活性化並びに地域住民の生活の向上及び交流の促進に資する事業活動を通じ自立的で個性豊かな地域社会の形成に貢献していることについて、地域住民の理解を深めるよう努めなければならない」と努力義務を規定しています。

 国と自治体との政策連携をしっかりとリードしたところが次の時代の政策をつくっていける気がします。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2014年 4月 15日号より