中小企業の国民的意義発信を~中小企業憲章・条例推進月間キックオフ集会

 中同協・中小企業憲章・条例推進本部は6月3日、衆議院・第2議員会館において「2014中同協・中小企業憲章・条例推進月間キックオフ集会」を開催し、36同友会・中同協、150名の役員・事務局が参加。国会議員などを含めると総勢200名を超える参加で熱気を帯びる集会となりました。

 第1部では鋤柄修・中同協会長があいさつの後、大橋正義・中小企業憲章・条例推進本部副本部長が趣旨説明。「中小企業憲章の意義はますます強まっている」と強調しました。

 続いて中小企業庁長官の北川慎介氏が「中小企業・小規模事業者を取り巻く最近の情勢」と題して講演。北川氏は、中小企業の「特例」などを攻撃する人々がいるが、これらの人々は中小企業が雇用に果たす役割や地方に果たす大きな役割を見ない。これらの人々にこそ中小企業の国民的意義を理解してもらうことが重要になっていると述べました。

 また、日本商工会議所、全国中小企業団体中央会、全国商工会連合会、全国商店街振興組合連合会の4団体から発言。小規模企業振興基本法が制定まじかに迫り、同法が安定的な雇用の維持などを含む「事業の持続的発展」を位置づけたことなどに意義があると報告がありました。

 中小企業重点施策の実現と活用の実践事例として3氏が報告。中村高明氏(中同協金融プロジェクト委員長)が「経営者保証に関するガイドラインの対応・活用について」、守和彦氏(北海道同友会代表理事)が「中小企業振興基本条例と運用について」、田村満氏(岩手同友会代表理事)が「東日本大震災復興とエネルギーシフトの取り組み」と題して実践報告を行いました。

 第2部の「中小企業憲章の具体化についての各党・国会議員からの発言」では、まず最初に杉村征郎・中小企業憲章・条例推進本部副本部長が趣旨説明。衆参両院の経済産業委員会の理事・委員を中心に25名(前々回、前回、12名、11名)の国会議員が熱いあいさつをしました。

 最後に広浜泰久・中同協幹事長がまとめと謝辞を述べ閉会となりました。

 集会終了後、会場を移して行われた拡大中小企業憲章・条例推進本部会議には103名が参加。今回は、衆参両院の経済産業委員会の理事・委員全員に案内をし、それぞれの地元の秘書を通じ連絡を取ったことが25名もの参加につながったことなど集会の感想と意義を確認しました。また、各同友会での月間の取り組みなども交流しました。

 大林弘道神奈川大学名誉教授は「今日は与野党の議員の口から『党派を超えて』という言葉が聞かれた。着実に前進している」とコメント。同友会の存在感とキックオフ集会で生まれた成果を示す集会となりました。

中小企業4団体の報告

 中小企業4団体の代表からはそれぞれの具体的な取り組みの報告がありました。

 日本商工会議所の加藤正敏・中小企業振興部長は、厳しい経営環境にある中小企業への支援の重要性、経営者保証に依存しない融資の推進について報告。

 全国中小企業団体中央会の庄山浩司・政策推進部副部長は、「組織として中小企業が直面しているさまざまな問題に1つひとつ手を抜くことなく取り組んでいきたい、同業異業種との連携を推進し中小企業にとってさらなる発展のチャンスを作れるよう行動したい」とあいさつしました。

 全国商工会連合会の榎本陽介・企業環境整備課課長は、6月20日に通常国会で成立する予定の小規模企業振興基本法に力を入れてきたと報告。外形標準課税拡大については「皆さんと力を合わせて反対の声を上げたい」と報告しました。

 全国商店街振興組合連合会の本吉正・専務理事は、「景気回復について徐々に光が見えつつあるが実感は享受できない。力を合わせ、結束し、団体としてお願いすることはお願いし、反対することは反対する。引き続きご支援お願いします」とあいさつしました。

25名の国会議員があいさつ

 集会には25名の国会議員と11名の代理(秘書)が出席しました。

 あいさつした国会議員からは日本における中小企業の重要性を再認識するとともに、経営環境改善のために党派を越えて共に戦っていくという強い決意が語られ、毎年の国会内での集会が、国政における憲章推進と具体化に効果を発揮していることが確認されました。

当日あいさつされた国会議員のみなさん(順不同)
富田 茂之氏(公明党) / 田嶋 要氏(民主党) / 江田 康幸氏(公明党) / 穴見 陽一氏(自民党) / 石崎 徹氏(自民党) / 大見 正氏(自民党) / 宮崎 政久氏(自民党) / 八木 哲也氏(自民党) / 近藤 洋介氏(民主党) / 辻元 清美氏(民主党) / 木下 智彦氏(日本維新の会) / 丸山 穂高氏(日本維新の会) / 小池 政就氏(結いの党) / 塩川 鉄也氏(日本共産党) / 大久保 勉氏(民主党) / 中野 正志氏(日本維新の会) / 直嶋 正行氏(民主党) / 高市 早苗氏(自民党) / 上川 陽子氏(自民党) / 大島 敦氏(民主党) / 玉木 雄一郎氏(民主党) / 鈴木 克昌氏(生活の党) / 櫻井 充氏(民主党) / 大塚 耕平氏(民主党) / 吉田 忠智氏(社民党)

憲章の国会決議へ向けて

▼国会決議を目指すならば、全同友会から働きかけ、党派に偏らず連携を取って進める必要があります。与野党ともにしっかり声を掛け全党連携して進めてほしい。

▼資金繰りの円滑化の支援、販路開拓のサポート、税と社会保障の負担感の軽減、事業承継など要望を受け止めて憲章の国会決議をし、魂を込めるために頑張っていきたい。

▼憲章の閣議決定から3年、いまだに国会決議がされていないのは国会議員一人ひとりが中小企業を大事にしていないということの表れではないかと思っています。皆様の思いを受けとめ党派を越えて全力で中小企業施策の充実を図っていきたい。

▼中小企業憲章を閣議決定したことを評価したいと思います。しかし中身はまだこれからなので、あとは超党派でもって国会決議でまとめあげたい。

▼憲章関係の決議案を折衝してきたが、与党は受け入れてくれませんでした。憲章の中身を見れば反対する理由はありません。まだまだチャンスはあります。思いは一緒です。共に頑張っていきましょう。

憲章の理念を踏まえた施策の展開

▼昨年は中小企業基本法の改正を行い、どのように中小企業を育てていくかの具体的な成果目標の作成、産業競争力強化法による企業のワンストップサービスも開始し、6月に第2次を開始します。皆さんの思いは1つひとつの政策で実現していきますので、ぜひ地元のそれぞれの政党の政治家とのしっかりしたお付き合いを始めてください。

▼小規模企業振興基本法の採択がほぼ確定となっている。皆さんの思いが現場に落ちていくようにしたい。

▼小規模企業振興基本法案の中に、個々の企業の支援に留まらず面的な支援が必要だということが強く言われています。地域経済の担い手である小規模企業の支援には面的支援が欠かせません。条例推進や悉皆調査、中小企業者が参加する振興会議、これら3点セットを進め、地域づくりを行っていく上で今法案は大いに活用できると思っております。

▼女性企業家、雇用について同友会からの全ての要望・課題を提言書にまとめ、安部政権でも女性の活躍推進のための施策について一丁目一番地にあげて、PDCAを回し、女性企業家が増えるよう取り組んでいきたい。

中小企業・小規模事業者を取り巻く 最近の情勢

中小企業庁長官 北川 慎介 氏

 中小企業・小規模事業者の最近の景況感は、リーマンショック後に比べれば上向いていますが、業種・地域・規模によってばらつきがあります。中小企業の数は、昭和の終わり頃は約533万社ありましたが、2012年には385万社まで減ってきています。

 少子高齢化、過疎化・都市一極集中、女性・若者の雇用問題、国際競争の激化、IT化の進展など、日本経済社会の構造的変化が進む中、中小企業政策としては、「小規模事業者に光を当てた施策の再構築」、「わが国の強みを支える中小企業・小規模事業者の新たなチャレンジを応援」という2つの方向で進めていこうと考えています。

 現在の中小企業・小規模事業者政策としては、(1)被災地の復旧・復興(中小企業等グループ補助金、仮設施設整備事業、二重ローン対策)、(2)消費税転嫁対策(転嫁Gメンによる監視・取締り、15万事業者への書面調査、相談窓口設置)、(3)小規模事業者に光を当てる(小規模企業振興基本法の制定、“ちいさな企業”成長本部、小規模企業者向け施策の充実)、(4)イノベーションの推進(ものづくり・商業・サービス革新補助金、中小企業投資促進税制、産業競争力強化法に基づく創業支援体制の強化)などに取り組んでいるところです。

 今、気になっているのは、法人税減税に関わって外形標準課税の議論、赤字の企業にも税金をもっと払ってもらったらどうかという議論が出てきていることです。10年前にもこの議論がありましたが、私たちは「大企業は外形標準課税で仕方ないが、中小企業は駄目だ」とがんばりました。中小企業憲章にもつながりますが、中小企業は国の源泉、地域の宝です。赤字とはいえ、中小企業・小規模事業者は、実際に、人を雇い、その人が所得税を払い、会社も固定資産税や社会保険料なども払うなど、いろいろ社会的な負担をしています。その上で地域は成り立っています。この中小企業の意義や実態を知ってもらうことが大事です。

 中小企業が地域経済の重要な構成要素だという国は、日本やヨーロッパの一部の国くらいで、ほかにはあまりありません。世界でもめずらしい宝なのです。

中小企業重点施策の実現と活用の実践事例

報告(1)「経営者保証に関するガイドライン」の対応・活用について

中同協金融プロジェクト委員長 中村高明氏

 90年代のバブル崩壊以降、金融機関は自己資本比率を高めるため中小企業の貸し渋り、貸しはがしに走りました。同友会は2001年から金融アセスメント法制定運動をスタート。101万署名、1009議会の決議を経て、リレーションシップバンキング施策が始まります。

 包括根保証禁止、政府系金融機関の第三者連帯保証原則禁止等が実現。さらには民法改正に伴う個人保証の原則禁止に伴い表題のガイドラインを昨年暮れ発表。この成果を受けて、中同協は会員企業が金融機関との保証関係改善の取り組みを強めるよう、呼びかけています。

報告(2) 中小企業振興基本条例制定と運用について

北海道同友会代表理事 守 和彦氏

 北海道同友会では、2003年中同協総会での憲章制定の決定を受け学習活動を開始、06年全道総会で条例制定運動に着手しました。

 中小企業施策を読み取り、活用する力をつける、自社の経営基盤の強化と地域の安定と発展をめざす共通認識を深めることを重視。条例は制定がスタート。酪農の町、別海町では町民と共に地域を良くしようと活動し、86社(34%)に会員が増えました。

 34万の人口を抱える旭川市では商工会議所と業界懇談会を重ねオール旭川で制定。現在条例制定市町人口は62%。全市町村での条例制定をめざしています。

報告(3)東日本大震災復興とエネルギーシフトの取り組み

岩手同友会代表理事 田村 満氏

 大震災の復興では「1社もつぶさない、つぶさせない」をスローガンに活動してきました。重要なのは雇用を守ること。会の内外に雇用調整助成金等の活用を勧めてきました。グループ補助金も取得、4分の3が助成、4分の1が自前、そこを高度化スキームで支援してもらう。これが憲章、条例の具体化ではないか。

 今、岩手はエネルギーシフトに注力。原発の代替エネルギーへの大転換が必要です。家の建築、リフォームでも、外気を入れない、暖かい空気を出さない建築工法を地元工務店が開発しています。同友会は団結してこの課題に取り組みます。

「中小企業家しんぶん」 2014年 6月 15日号より