増税後の落ち込みは「想定内」ではない

実質所得の悪化がボディブローのように効いてくる

 日銀が7月1日発表した6月の全国企業短期経済観測調査(短観)。4月1日の消費税引き上げから3カ月が経ち、景気がどうなったかを観(み)ることにします。

 まず、日銀短観のポイント。景気が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた業況判断指数(DI)は大企業の製造業が5ポイント悪化のプラス12、非製造業も5ポイント悪化のプラス19で、ともに1年半ぶりの悪化。中小企業も製造業が3ポイント悪化のプラス1、非製造業も6ポイント悪化のプラス2で幅広い業種で悪化しました。

 では、報道各社はどう伝えたか。日経新聞は「景況感、先行き温度差」(7月2日、以下同じ)と題し、製造業と非製造業の企業心理に温度差をみます。製造業のDIはプラス12から、3カ月後はプラス15へ改善する見通しです。ただ非製造業の先行きの見方が慎重。大企業の先行きDIは横ばい、中小企業は2ポイント悪化の見通しです。

 結論として、原油高リスクがくすぶる中、「内需の息切れを防ぎつつ、外需の回復をもたらせるかどうかが景気の先行きのカギを握りそうだ」と結んでいます。

 産経新聞は「浮かぶ綱渡りの内需頼み」の通り、アジアの景気低迷など足元の輸出は回復が遅れており、「景気回復は当面、内需に頼らざるを得ない状況だ」とします。

 朝日新聞は「景気、確信持てぬ夏」、サブで「多い上向き予想、でも短観悪化」とし、「家庭が財布のひもを引き締め続けているためで、『夏の景気回復』はまだ見通せない」とします。

 同友会景況調査(DOR)はどうなっているか。ほとんど全ての指標が急落しました。

 前年同期比の業況判断DI(「好転」―「悪化」割合)は20→マイナス1、売上高DIは24→ 3、経常利益DIは12→マイナス4といずれも急落。足元の景況を示す業況水準DI(「良い」―「悪い」割合)も10→マイナス8と18ポイントも悪化しました。

 1997年の消費増税直後(1997年4~6月期)はそれぞれ10ポイント以内の悪化でしたが、今回は10ポイント後半から20ポイントを超える悪化でした。増税の影響は「軽微」とはとても言えません。

 大企業が新製品の発売や特売セールなどで持ち直す兆しを見せるなか、中小企業の回復は緩慢です。

 経済指標の改善はまだら模様ですが、所得・消費に関わる指標の悪化が目立ちます。

 実質賃金をみると4月3・4%減、5月3・6%減と賃金アップの努力が消費増税や原材料価格の値上がりによる物価上昇には追いつかず、勤労者所得は直撃を受けているのが実態です。

 また、家計の消費支出が前年同月比で4月4・6%減、5月8・0%減と大きく落ち込んでいます。これは、東日本大震災並みの落ち込みです。

 増税後の落ち込みは「想定内」ではありません。実質所得の悪化が深刻化しており、ボディブローのように効いてくるでしょう。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2014年 7月 15日号より