【新・わかりやすい中小企業振興基本条例Q&A】 第1回

Q 振興条例制定の背後にある問題は何ですか。

A いろいろありますが、何と言っても人口減少社会が到来する問題です。人口減少・高齢化等で「縮小」局面にある地方経済・財政が問題です。今年5月、日本創成会議(座長・増田寛也元総務相)が地方自治体の半数を「消滅可能性都市」として公表しました。今後30年間で若年女性が半減するとの試算結果が示された自治体は半数の896自治体にも上ります。

 人口減少の速度の不均衡は地域経済の姿を劇的に変貌させる地域の出現を予想させます。産業活動の縮小が進み、商店街の空き店舗の増殖や商店街そのものの崩壊、耕作放棄農地の増加、さらに公共インフラの遊休化・荒廃など厳しい状況に直面する可能性があります。

Q 振興条例制定の目的は、中小企業振興と地域振興の共通認識、旗印を持つことです。では、なぜ中小企業は地域経済振興の担い手と言えるのでしょうか。

キックオフ集会

A その根拠は次の4点にあります。

 (1)地域のさまざまな需要を満たすのは中小企業であること。中小企業は地域の需要を満たす「地域需要産業」という性格を持っており、中小企業のレベルによって地域の生活や産業の質が大きな影響を受けます。

 (2)産業集積を形成して地域の中核産業になっていること。中小企業は地域需要産業にとどまらず、産業集積を形成することにより移輸出力をつけ、全国・世界市場を対象とする地域の中核産業になります。

 (3)中小企業の経済活動は地域への再投資に回り波及効果が高いこと。中小企業は所得(付加価値)の地域外への漏出率が低く、地域内での産業連関度も高いため、中小企業の経済活動の地域への波及効果は高いのです。

 (4)中小企業経営者が社会階層としても地域の核になっていること。大企業にとって地域は利用の対象でしかないが、中小企業は地域と一体化しています。中小企業の基盤は地域であり、地域の発展は中小企業の発展に直結していることです。

 しかも、中小企業経営者は地元住民としても地域に関わっており、地域経済発展への貢献意欲は強いのです。まちづくりやお祭りへの協力、地域リーダーとしての活動など、地域の社会活動においても中核となっていることです(以上、黒瀬直宏著『中小企業政策』を参照)。

「中小企業家しんぶん」 2014年 7月 15日号より