【新・わかりやすい中小企業振興基本条例Q&A】 最終回

Q 中小企業振興基本条例は地域特性に合わせた振興条例につながることはあるのでしょうか。

A あります。農林水産業が主体の地域などでは「中小企業」を主としない地域産業振興条例になる場合もありえます。

 2005年の三重県の「三重県地域産業振興条例」のように、産業一般と農林水産業、農林水産業以外の産業に分かれた基本方針を1つの条例に盛り込んでいる例があります。

 しかし、中小企業に関わる条項は「中小企業の経営基盤の強化に必要な経営資源の確保に努めること」しかないことから、もっと中小企業に関する項目の入った条例が求められていました。そこで、2014年「三重県中小企業・小規模企業振興条例」が制定され、全面的に中小企業に関わる条例ができました。

 また、中小企業に係る政策課題は、すべてが中小企業振興基本条例に包摂されるものではありません。当面は、中小企業振興基本条例制定が運動の目標となるが、中小企業憲章に関わる政策課題の条例化・体系化も将来的には課題となります。

 例えば、自治基本条例や市民参加条例にはじまり、各論的な条例である生活環境条例やまちづくり条例、雇用創出条例、自然エネルギー促進条例など。地域の課題解決のために、地域中小企業(団体)と地域の運動主体が連携して条例づくりに取り組む可能性は広がっています。エネルギーシフトは同友会としての挑戦課題といえます。

Q 振興条例の制定後、どのような課題が想定されるでしょうか。

A 振興条例制定は「出口」ではなく、「入口」。政策立案と実施こそ本番です。立派な振興条例が制定されても、振興条例制定に相当なエネルギーを使ったため、条例を活用することや具体的な政策立案まで踏み込む余力がなくなることもあり得ますが、条例が生かされなければ意味がないといえます。そのためには、調査活動と市民参加型の「産業振興会議」の設置がカギになります。

(了)

「中小企業家しんぶん」 2014年 11月 5日号より