中同協消費増税・税制に関するアンケート調査結果 発表 消費税10% 66%が「中止・延期」求める

 中同協は消費増税の影響などについて会員企業を調査し、39同友会3645社分の集計をまとめました。消費税率引き上げの反動減と円安・物価高が中小企業を直撃、利益が圧迫されるなか消費税10%への再引き上げに66%が「中止・延期」を求めています。外形標準課税の適用拡大も76%が反対するなど中小企業向け課税拡大計画にも批判が高まっています。政府は、GDP(国内総生産)の主役である中小企業の実態と声を尊重した政策決定が求められます。

1.8%実施で景況感は激落。「7~9月期に回復」の予想に反し、さらに悪化へ。

 消費増税の8%引上げ後、4~6月期の景況感*は20→△1と21ポイント激落しました。その時点では次期7~9月期には△1→6と回復見込みでしたが、実際の結果は△1→△5と悪化、「想定外」という結果になりました(図1)。次期以降も停滞が見込まれています。個人消費の大元である実質賃金・実質所得が増えないなか、内需の冷え込みが深刻に響いています。[*同友会景況調査(DOR)の業況判断DI(「好転」マイナス「悪化」割合、前年同期比)約1,100社回答]

2.3%増税分以上の原材料価格・経費の上昇 6割の企業が直面。価格転嫁厳しい。

 4月以降の原材料価格の上昇は「3~5%上昇」30%、「5~10%上昇」26%、「10%超上昇」6%と、合計62%が増税分以上の上昇に直面しています(図2)。3%増税分以上の価格転嫁をできている企業は多くありません。消費増税に加えて、円安・物価高で利益が圧迫されています。特に繊維・木材、鉄鋼・非鉄金属、運輸などの業種で深刻な状況です。

 このような状況下で、消費税10%になれば、8%実施のときより価格転嫁に苦戦するとの見方が強まっています。

3.10%「中止」・「延期」求める声 66% 4ヶ月間で急増

 以上のように消費税10%の条件は整っているとは言えません。5月時の調査と今回(9月調査)を比べると10%計画を「実施すべき」25%→20%、「中止すべき」24%→26%、「延期すべき」28%→40%、「わからない」23%→15%と、延期を求める声が4カ月の間に急増しました(図3)。いまや66%が「中止・延期」を求めています。この声を尊重することが求められます。

4.外形標準課税の適用拡大 76%が反対

 中小企業の人件費や資産に課税するなど外形標準課税の適用拡大について76%が反対と答えました(図4)。その他の中小企業への新たな課税計画についても全面的に反対の声が多数となりました。中小企業の雇用や設備投資に冷や水を浴びせかねない税制改定案に対して「『中小企業憲章』の精神に反する」との声が日に日に大きくなっています。

10%の際、価格転嫁が「まったくできない」と見込む理由

学校教育…学生募集への影響を考えると学生納付金の引き上げは行えない。
保険調剤…われわれのような保険調剤は材料費(薬剤仕入)に消費税増税されるが、保険請求には消費税が発生しない。つまり仕入れ価が上昇し、利益が下降するのみ。
化学・石油製品製造…価格転嫁できてもその後、外注の価格コンペが実施される。
建設業…下請けのためこちらの言い値は通らない。足りても足りなくても「これだけあげるからとにかくやりなさい」という状態。
サービス…不動産賃貸業のため、家賃に消費税はかけられない。
障害者福祉施設…社会福祉法人のため、福祉事業、医療事業で顧客へ消費税請求できない。
事業所向け弁当の製造、販売…8%の価格改定も金額ベースで半分くらいしかできなかった。理由は、競合他社の価格据え置きでの営業活動、価格変更をお願いした顧客の他社への変更など。今回の値上げ交渉に回った感覚では、短期間での複数回の値上げは困難とみている。
製缶溶接…材料費としては認めているものの加工費は認めてもらえない所が多い。
和洋菓子製造販売…大口の注文等(今の時期は敬老会の祝菓子等)では、ほとんど税込価格での対応を求められる。「市からの補助金が税込価格である為」、「国は予算がない」、「消費税を負けてほしい」等々。この様な場合、価格転嫁どころか8%全くの丸かぶり。大口の引き菓子ほどその傾向が強い。

10%の「延期・中止」を求める理由自社の経営状態から~

建設業…今春の消費税が3%アップしたことにより、ほとんどの材料や機器が値上がりしています。消費税分を価格に転嫁できても、機器や資材の値上がり分を、価格に転嫁できません。
建設業…駆け込み需要の反動があるから大変です。職人がいないのが響いています。職人がいないという理由で価格が上がった。1度建設物価が上がるとなかなか下がらず、下請業者も悪い影響を受ける。
流通業…8%になったときに、ユーザーからの値下げや色々な要望の調整などしてきた。それがすぐの来年また2%上がるとなったらどのような要求がでてくるのか予想できない。また、仕入価格の値上げもあり非常に苦しい状況になる。
サービス業…8%になって、3%分給与を上げたが、次に2%上げるのは苦しい。売り上げは前年を下回っているから。従業員の暮らしを考えると、中止してほしい。
建設業…8%の際、建設業全体の駆け込み需要は確かに感じられたが特需の要素が強く売上は上がるが、こなせる仕事量が限られてしまう。積み立てのようには仕事はこなせない。8%→10%になれば第2の駆け込みがありそう。
サービス業…一般消費者への価格開示の義務が生じるため、都度広告宣伝における訂正が必要となる。また、エンドユーザーの消費税が全体的に向上し、負担増になればなるほど、平均単価が落ち込む。5%→8%へ転嫁した時の売上額が下落。よって、8%→10%への転嫁を更に行った場合も同様。
サービス業…弊社の業界では、需要が低下しているにも拘らず新規開店する場合が多く、古い店舗は価格競争で争わないと受注できない状況です。お客様がお支払いする総額が上がるとなると、余計に需要が減るような気がするからです。

調査要領

調査時:2014年9月1日~2014年9月19日
対象企業:39都道府県の中小企業家同友会会員企業
調査の方法:会員専用サイト(一部FAX)にて配信、自計記入、回収
〔回答企業の概要〕 ※比率は回答企業の構成比
回答数:39都道府県3659社が回答(3645社分を集計)。
業種別:建設業19%、製造業22%、流通商業26%、サービス業33%、不明分除く
企業規模(従業員数):5人未満27%、5人以上10人未満23%、10人以上20人未満21%、20人以上50人未満19%、50人以上100人未満6%、100人以上4% 不明分除く

「中小企業家しんぶん」 2014年 11月 5日号より