トヨタ、部品値下げ求めず~リーマン・ショック前の水準を回復していない7割の下請

 長く生きてりゃ、いいこともあるもんだ。ただ、浮かれてばかりでは済まなそうです。

 「トヨタ自動車は継続して調達する購入価格について、2014年10月~15年3月分は取引企業に値下げを求めない方針を固めた。年2回の価格交渉で一律に値下げを見送るのは初めてとみられる」(「日本経済新聞」10月25日)という記事です。

 トヨタはエンジンやバネなど部品について、主要な仕入先でつくる「協豊会」のメンバーなど国内約450社の1次取引先と半年ごとに価格交渉をしています。値下げ幅は取引先の合理化や量産効果で生じたコスト削減分などを考慮して決めます。

 トヨタの2014年4~9月期の連結営業利益は1兆3000億円程度と過去最高を更新したもよう。2015年3月期も2期連続で最高益を更新する見通しです。一方、電気料金の引き上げや円安による原材料費の上昇などに苦しむ中小企業の業績は低迷しています。

 低迷の中、1%を切る値下げを求める計画を、値下げを見送ることで本来生じるはずの数百億円の収益改善分を取引先に還元するということのようです。

 リーマン・ショック後の景気低迷や円高が進んだ時期にも3%近い要請をしていたトヨタがどうしたことでしょう。下請けの体力が1%を切る値下げを求めることもできないところまで来てしまったのでしょうか。

 気になるデータがあります。トヨタの下請け企業の初の調査です(帝国データバンク、2014年8月11日)。これによると、下請け企業は、直接、間接を含め、2万9315社にのぼり、従業員合計は135万3193人に達しました。

 年売上高別に見ると、1次下請け先、2次下請け先ともに「1億円以上10億円未満」が最も多く、合計で1万6062社(構成比54・8%)にのぼり、全体の5割超を占めました。

 気になる売上高ですが、2007年度から直近の2013年度において、それぞれ2期連続で年売上高が判明した企業を集計したところ、2013年度の「増収」企業比率は、1次・2次下請け先合計が40・7%(8968社)、1次下請け先が44・6%(1539社)、2次下請け先が40・0%(7429社)にとどまりました。

 また、2007年度と2013年度の年売上高を比較したところ、2007年度を下回る「減収」企業比率がいずれも約7割にのぼるなど、多くの企業が依然としてリーマン・ショック前の2007年度の水準を回復していないことが分かりました。

 親企業が2期連続で最高益を更新する一方、子企業はリーマン・ショックの傷も癒えない企業が7割も存在するというコントラスト。これに耐え切れなかったと解釈すべきでしょうか。

 どうせなら、最高益の一部を下請け企業に還元するとか、部品値下げを求めない期間を延長するとか、どうにかならないでしょうか、トヨタさん。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2014年 11月 15日号より