小さく成長する時代~復興需要に依存しない復興を

 東日本大震災から3年9カ月、あらためて被災の大きさを感じます。

 総務省「経済センサス」によると、2009年から2012年の事業所数の増減割合(全国平均7・4%減)は、宮城県が13・2%減、福島県が12・6%減、岩手県が10・5%減と47都道府県のなかでも最も減少割合が大きい下位3県を構成しています。震災によって多くの企業が事業を停止したことが推測されます。

 また、事業を継続している企業をみても、その活動は以前より低迷しています。東北経済産業局が2013年6月に実施した「グループ補助金交付金先アンケート調査」では、震災からの復旧に際して補助金を利用した企業のうち、震災直前と比べて売上が減少している企業の割合は63・4%です。復興需要が多い建設業こそ過半数の企業で売上は増加しているが、ほかの業種では多くの企業で震災直前よりも売上が減っている状態です。

 そのなかで、福島、宮城、岩手の同友会と会員企業は例外的と言える「元気」を発揮しています。

 しかし一方、国・県の助成金に頼ってしまい、実際には営業が成立しておらず債務超過になった会員企業の撤退もありました。

 復興需要は今後もまだしばらくは存在しますが、やがて終わりを迎えます。そのときまでに、震災前から存在していた地域経済の課題、すなわち、少子化・高齢化、人口減少による地域需要の減少などへの対応がなされていなければ、被災地の経済は衰退することが予想されます。「復興需要に依存しない復興」を実現することがカギとなるでしょう(井上考2「震災後の中小企業の取り組みと役割」『日本政策金融公庫論集』2014年11月号)。

 ただし、見方を変えれば、日本がかかえる人口減少問題が東日本大震災によって、東北地方に少し早く到来していると考えられます。であれば、大胆かつ本質的な都市政策を「実験的」に挑戦するのも「あり」かもしれません。

 縮小都市という考え方があります(矢作弘『縮小都市の挑戦』岩波新書)。この本によれば、地球の人口が70億人を突破する時代に、1990~2000年には、世界の人口10万人以上の都市の4分の1以上が人口を減らしています。縮小都市が21世紀都市の基本的な類型の1パターンになるといいます。

 小さく、賢く成長する。これが縮小都市のキャッチコピー。縮小が都市発展の新たな方向性になるのです。小さくなることによって環境を改善し、生活の質を向上できれば、それは立派に都市が成長し、発展していることになる、という社会思想です。

 ドイツの経済学者シューマッハーが「今日、人びとはほとんど例外なく、巨大信仰という病にかかっている。したがって、必要に応じて、小さいことのすばらしさを強調しなければならない」と訴えたのは40年前のことです(『スモール・イズ・ビューティフル』講談社学術文庫)。

 小さく成長する。新時代のキャッチコピーです。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2014年 12月 15日号より