【2014年度共同求人活動から】地域の未来を切り拓く共同求人活動

活動の理念と素晴らしさを全国に広げよう

 有効求人倍率の上昇傾向が続き、企業の採用意欲が高まりつつあると言われています。そのような中、各同友会で取り組まれた2014年度の共同求人活動の特徴を振り返ります。

求人・就職活動の動向

 2014年10月の有効求人倍率は1・10倍で、12カ月連続で1倍を上回りました。大企業を中心とした業績回復や人手不足を背景に、企業の採用意欲が高まっていることが要因と考えられています。

 一方、2014年3月に大学を卒業した学生の就職率は69・8%と前年より2・5ポイント上昇しましたが、学生にとっては厳しい状況が続いています。大学卒業者約56万人のうち、「正規の職員等でない者」「一時的な仕事に就いた者」及び「進学も就職もしていない者」を合算すると10万5000人。これらの安定的な雇用に就いていない者の卒業者に占める割合は、18・6%。前年より2・1ポイント低下しましたが、依然として高い水準となっています(文部科学省「平成26年度学校基本調査(速報値)」より)。

 Jobway参加企業は927社(前年比111・4%)になり、3年間増加傾向にありますが、各同友会が開催した合同企業説明会の参加企業数は延べ2155社(同92・9%)となりました。

 一方、合同企業説明会の参加学生数は延べ8309名(同61・1%)、Jobway登録学生数は1万6179名(同61・1%)となりました。2008年のリーマンショック後の就職難の中で2011年に過去最高水準まで増加した学生の合同企業説明会参加数、Jobway登録学生数は、ここ3年連続して減少傾向にあります。

早期化・長期化の是正へ

 政府の要請を受け、昨年9月に経団連が「採用選考に関する指針」として、広報活動は3年生の3月1日以降、選考活動は4年生の8月1日以降、採用内定日は4年生の10月1日以降とすることを発表しました。中同協では、9月に開催された第1回中同協共同求人委員会にて議論の結果、中同協でかねてから要望・提言してきた「就職活動の長期化・早期化の是正」に一歩前進するものであることから、この指針を歓迎し、取り組み内容や実施スケジュールなど指針に基づいた採用活動を実施していくよう、会員企業に呼びかけています。

広がる大学・行政との相互協力関係

 各同友会では共同求人活動の理念に基づき、量質ともに強化するさまざまな取り組みが進められました。

 多くの同友会では、共同求人と経営指針、社員教育などの活動の連携強化が図られました。関係委員会の合同会議・合同学習会・連続セミナーの実施、活動への相互参加、報告者の相互派遣などが行われました。中同協では、2月に「4委員会合同研修会」を初めて開催し、共同求人・経営労働・社員教育・障害者問題の4委員会合同での交流を行い、相互の活動への理解を深めました。

 学生に「働くこと」の意味や中小企業の役割・魅力を伝える活動も継続的に取り組まれました。インターンシップ、企業見学バスツアー、「3日間の社長弟子入りプロジェクト」、提供講座・授業への講師派遣、学内合同企業説明会への協力、就職ガイダンスなど、学生が実際に企業の現場や経営者の考えなどに触れることで、学生が自らの労働観・就職観などを確立することを支援しました。

 熊本同友会では、3月と7月に「学校と経営者の懇談会」を開催し、高校の校長や進路指導担当者、大学の就職担当者、会員経営者で懇談を行いました。参加した学校関係者からは「中小企業の思いを感じた」、会員経営者からは「企業と学校が連携を深めることで、子どもたちの未来はより明るいものになると感じた」との声があり、学校と経営者との相互理解をより深めています。

 中同協共同求人委員会では、小暮恭一・中同協共同求人委員長が理事になっている全国大学実務教育協会(全国215校が加盟)と協力関係を築いています。11月に行われた意見交換会では経済界関連団体から中同協や東京経営者協会、日本商工会議所が参加し、お互いの見地からキャリア教育のあり方やインターンシップなどについて意見交換。今後も定期的に開催し、現状や連携について議論することになりました。

ブロックでの共同求人活動

 各ブロックでの共同求人活動普及の取り組みも広がりを見せています。

 中同協共同求人委員会では本年度より各ブロックから副委員長を選出してもらい、ブロック内で協力体制をつくることで、全国的に共同求人活動を普及する取り組みを始めています。

 東北ブロックでは8月に「東北ブロック共同求人担当者会議」を宮城同友会事務局で開催。青森、岩手、山形、福島、秋田、宮城6県の共同求人委員会担当者及び事務局員が参加し、ブロックでの活動の現状や今後の推進について交流を行いました。首都圏の同友会や関西ブロックでも連携強化をめざす取り組みが進められています。

「人を生かす経営」の総合実践

 11月20~21日に長野で開催された第4回人を生かす経営全国交流会には同友会・中同協から466名(来賓含む)が参加。「今こそ『変革と継承』の時~共に育ちあい、企業と地域の未来をつくろう~」と題して学びあいました。

 第4分科会では「目の前に立つ1人の若者から始まる企業づくり・地域づくり・同友会づくり」をテーマ秋田、宮城、福島同友会から、東北全体の復興推進の中での同友会における実践が報告されました。企業の未来を担う若者を採用することで社風の変化が生まれたこと(秋田)、地域が疲弊する中で大きな人口流出が起きていること、地域に根ざした中小企業が本当の覚悟を持って雇用を生み出していく必要があること(宮城)。また、運動を支える事務局の労働環境整備や計画的な採用についても報告(福島)。自社を維持発展させるには、戦略的な雇用が必要であること、そして、何よりも地域の雇用を担う会員企業を同友会内に増やし、地域にあてにされる企業・同友会になることが重要だということが確認された分科会でした。

 人口減少が続く中、中小企業が地域の雇用を担うことは、地域を再生し、地域を創造する力につながります。全国に参加企業の輪を広げ、未来を切り拓いていきましょう。

「中小企業家しんぶん」 2014年 12月 25日号より