「地方創生」はうまくいくのか

エネルギーシフトと地方の弱みの克服を

 昨年12月、安倍内閣は、わが国の人口減少に歯止めをかけることなどを目的に「まち・ひと・しごと創生長期ビジョン」と、これを実現するための「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を閣議決定しました。

 この「長期ビジョン」「総合戦略」に基づき、今後、都道府県および市町村は、遅くとも2015年度中に独自の「地方版総合戦略」を策定することになり、自治体の創意工夫が問われています。

 しかし、「地方創生」はうまくいくのか、懸念があります。落ち込んだ地方経済の立て直しや雇用の創出には、これまでさまざまな手を打ってきました。「地方創生」とは名前こそ耳慣れませんが、やろうとしていることは決して目新しいことではありません。

 国も地方もそれらの施策に熱心に取り組み、巨額を投じてきましたが、その揚げ句が今日の地方のありさまなのです(片山善博「経済教室」『日本経済新聞』2015年2月4日)。

 そもそも経済が停滞している原因は何なのでしょうか。片山氏は、1つの県を独立国と見立てて、域外への「輸出」と域外からの「輸入」を比較すると、「輸入」が「輸出」を大幅に上回って大赤字になっていることが問題だとします。とはいえ、「輸出」を増やすのは企業誘致など地域間競争が厳しい現状では容易なことではありません。

 最も確実なのは、「輸入」を減らすことです。多くの地域の「輸入品」の代表は石油や電気などのエネルギーで、これが日々膨大なお金を域外に流出させています。これを、「国産品」すなわち風力発電や木質バイオマス利用などに代替させることで「輸入」を減らすことできます。これは、片山氏は明示していませんが、エネルギーシフトそのものではありませんか。

 また、国の2015年度予算案には、地域で発行できる4200億円分の商品券向け交付金が盛り込まれています。この4200億円という数字は、これを東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)の年間転入超過数十万人で均等に分配すると考えれば、1人あたりの受取金額は、民間企業給与所得者の年間給与414万円にほぼ匹敵する420万円となります。

 実際にはこうした配布方法はとられることはありませんが、金額的には、1年間は東京圏への転入超過数をゼロにできるだけのインパクトのある政策となります。

 ただし、国内における社会的人口移動は、あくまでも経済的な地域格差などを背景とした“結果”ととらえるべきです。地方政策で考えるべきは、(1)若い世代が長期にわたって定着することを可能にし得る産業や雇用機会をいかに維持・創出するか、(2)暮らしの快適性や機能をいかに高めていくかということに、焦点を当てることです(藤波匠「地方都市再生」日本総研)。

 「地方創生」は政策効果を長期的視点で考え、エネルギーシフトと地方の弱みである利便性の低さを技術革新などにより改善していくことが望まれます。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2015年 2月 15日号より