日本の富裕層と貧困化

 「資本の収益率は常に経済成長率を上回り(常にr>g)所得格差が広がり、経済を阻害している」という提起が世界中で話題となった『21世紀の資本』で有名なフランスのトマ・ピケティ氏が来日しました。

  表1 金融資産保有額の階層別世帯数

 ピケティ氏は米国ほどではないにしろ日本でも、中間層や非正規の階層を含む下位90%の国民所得について90年代以降下落が続き格差を広げていると分析しています。日本では野村総合研究所の推計による分類として、2013年の超富裕層と富裕層が2011年からの2年間で107万世帯の24.3%増と発表しました。しかし、表1から推移を見ると19.7万世帯増だけです。マス層(3000万円未満)が134万世帯増で4182万世帯と大幅な貧困層の増加が読み取れます。また、政府公表の貧困率推移を見ても日本の貧困が増えているのが読み取れます(表2)。

 所得格差は経済成長を損なっているとOECDが昨年12月に報告しました。「過去30年で富裕層と貧困層の格差が最大に、25年間で8.5%もGDPを押し下げている。この悪影響は下位40%に及ぶ。教育に十分投資しないため」と結論付け、「教育のための再配分は成長を阻害しないとしている」と指摘。つまり、人育てが成長に貢献するとしています。(ピケティ氏が提唱する富裕層増税について、オバマ大統領が米予算教書で「法人税35%から28%に引き下げ、海外所得に19%税率強制課税、大銀行特別課税、年収100万ドルを超える富裕層30%へ所得課税」と大胆な提案をしています。)

※野村総合研究所の5区分は超富裕層(純金融資産5億円以上)、富裕層(1億円以上5億円未満)、準富裕層(5000万円以上1億円未満)、アッパーマス層(3000万円以上5000万円未満)、マス層(3000万円未満)。

表2 相対的貧困率の推移

「中小企業家しんぶん」 2015年 2月 25日号より