小売業界の新たな戦い~ストアでなく、ショップ・「工房型」商店で

 家の近所の「ローソンストア100」がまた撤退したらしい。原因はわかりませんが、イオンの「まいばすけっと」が隣合わせのように出店しています。

 「ローソンストア100」とは、100円の均一価格とコンビニエンスストアの利便性が合わさったローソン系のお店。セブン‐イレブンとは共存できたようですが、「まいばすけっと」とは競合したらしいのです。イオンの「まいばすけっと」は、生鮮食品のある小型スーパーです。

 「まいばすけっと」に象徴されるように、小売業における現在のテーマは「スモール化」です。スモール化は顧客により近づくということ。より生活者に近づこうと思ったら、スモールサイズにして接近する必要があります。

 それは距離と時間、そして質の問題です。

 イオンは、郊外から中心市街地に戦略を転換したと言われています。岡山市や北海道旭川市に大型店をつくっていますが、「イオンモール岡山」はJR岡山駅から徒歩5分。開業してから3カ月が経ち、2カ月で390万人を集め、四国からの買い物客など広域な集客で順調な滑り出しを見せました。他の商業施設では競合によって2割減収の店も出てきています。

 ただし、「店内にいる客は多いが、固定客がいないことが原因で売り上げが伸びない」との見方も。勝負はこれからといったところでしょうか(日本経済新聞、2015年3月2日)。

 中小企業もうかうかしていられません。ストアを脱皮し、ショップになることが求められます。ストアは、商品を仕入れ、陳列棚に並べて置く小売店業態のことです。

 一方、ショップの第1の意味は「小売店・商店」ですが、2番目の意味は「(手仕事の)仕事場」です。店舗で手仕事をすることで新たな付加価値を加え、ほかの小売店にはない、差別化された商品を売る小売店、「工房型」商店です。この小売業態ならば郊外の大型店に太刀打ちできます。

 衰退した地方都市の中心商店街でも、店に併設して製造現場のあるインストアベーカリー、和洋菓子店、豆腐店はよく残っています。いずれもショップです。いろいろな人たちが1カ所に集まっておしゃべりするだけでなく、協議して作業し、新しいアイディアを創造する活動がワークショップです。

 ショップ(「工房型」商店)を中心に大型店に負けない商店街のモデルとして、3つの構想が考えられます。

(1)地方都市の空洞化した中心商店街に、ショップを集め、集積度の高い市場をつくります。

(2)隣接地に、高級食品スーパーを誘致します。

(3)周囲に、高級食品スーパーに負けない鮮度の良い品揃えをする生鮮3品の専門店を立地させます。

 これならば、大型店に対抗できるでしょう(矢作弘『縮小都市の挑戦』岩波新書)。しかし、(2)の高級食品スーパーの誘致は容易ではありません。地元の熱意が決め手です。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2015年 3月 15日号より