2015年1~3月期GDP(速報)に思う

消費税妄言・経済学者にだまされるな

 5月20日、内閣府から2015年1~3月期GDP速報値が公表されました。

 1~3月期の実質GDP成長率は前期比0・6%増、年率換算で2・4%増となりました。2014年度の実質GDP成長率は△1・0%となり、年度単位でみれば2014年度は2009年度のリーマン・ショック以来のマイナス成長に落ち込んでしまいました。

 2015年1~3月期は前期比0・6%増(年率2・4%増)と成長のモメンタムは加速しているようにも見えます。

 しかし2015年1~3月期の実質GDPの値は527・3兆円であり、2014年1~3月期(535兆円)と同4~6月期(525・5兆円)の実質GDPの平均値530・2兆円にも届いていない状況です。

 2014年1~3月期と同4~6月期の平均値とは、駆け込み需要と反動減がこの2つの期間の実質GDPの変動に大きく寄与したときに、反動減の影響が収束した際の実質GDPが落ち着く先を目安として示した値ですが、日本経済の現実はこの目安にも今のところ達していないということ。回復の動きは極めて緩慢です。

 2015年1~3月期の実質GDP成長率には在庫投資の拡大が最も寄与しており、年率換算で2・4%増に対して在庫投資の寄与度が2・0%ですから、実質GDPの増加の8割強が在庫投資の拡大によりもたらされたことになります。年率2・4%成長という結果は割り引いて考える必要があるでしょう(片岡剛士コラム、三菱UFJリサーチ&コンサルティング、2015年5月26日)。

 ところで、「朝日新聞(2015年5月23日)」の「経済気象台」に匿名(AS氏)で「経済学者にだまされるな」というコラムが掲載されています。

 コラムは英国の経済学者ジョー・ロビンソンの言葉「経済学を学ぶ目的は、経済問題について出来合いの答えを得ることでなく、経済学者・エコノミストにだまされないための方法を学ぶことだ」を引き合いに出し、昨年繰り広げられた消費税増税を巡る経済学者・エコノミストの多数派の混乱を揶揄してみせました。

 さらに、AS氏は言います。「消費税増税を強力に推進してきたある民間エコノミストは、『消費税引き上げ前の14年1月時点において、政府、日本銀行、民間エコノミストのいずれもプラス成長を見込んでいた』という。これは事実に反する。少数ながら、消費税引き上げの影響を憂慮していた経済学者、エコノミストも存在したからだ」。

 かく言う中同協の同友会景況調査報告(DOR)はどうだったのか。

 2013年10~12月期のタイトルは「中小景気、天井打つも、消費増税不況含み」、2014年1~3月期は「中小企業は消費増税反動減、谷深し」と、少数ながら消費税引き上げに警鐘を鳴らしていました。この時点では、少数派でしたが、1年を通して事実を言い当てていたのです。

 「経済学者、エコノミストにだまされないための方法を学ぶこと」とは真理を鋭くついた言葉です。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2015年 6月 15日号より