マイナンバー制度導入への意見

2015年6月 中小企業家同友会全国協議会

 中同協は6月3日の幹事会でマイナンバー制度について審議し、6月11日に以下のとおり意見を発表しました。

 私たち中小企業家同友会全国協議会(略称・中同協、47都道府県、中小企業経営者4万4000名で構成、http://www.doyu.jp)は、1969年(昭和44年)の設立以来、自助努力による経営の安定・発展と、中小企業をとりまく経営環境を是正することに取り組んで参りました。

当会としての取り組み

 1990年代後半から中小企業家同友会の会内や会員企業でインターネットの活用が進む中、2001年3月には積極的な活用を促進する一方、プライバシーの問題などを盛り込み、活用の際の注意点など考え方をまとめた「同友会活動におけるインターネット活用にあたっての考え方」(以下「考え方」)を発表。

 同年6月、情報化の促進および「考え方」の浸透を図るために、中同協幹事会(役員会)の諮問機関として「中同協情報化促進検討会(2006年情報化推進本部に改組)」を設置。コンピューターウイルスや不正侵入に対応するため、2002年1月には上記「考え方」にセキュリティーに関する項を盛り込みました。

 また、2004年には「個人情報保護に関する指針」を独自に作成し、全同友会へこの問題に関する注意を喚起しております。当会としても2008年から独自のプロジェクトを組み、「JISQ15001:2006」に基づく「個人情報保護マネジメントシステム」を構築し、2012年には「中小企業家同友会全国協議会個人情報保護に対する基本方針」を公表するなど、個人情報保護の取り組みを強化しております。

マイナンバー制度導入への問題点

 このたび「社会保障、税、災害対策の分野で効率的に情報を管理するもの」として、2015年10月から社会保障の共通番号(マイナンバー)が全国民に通知されます。

 本制度について、民間事業者においては、税や社会保障の手続き、給与所得の源泉徴収票作成など、同制度への円滑な対応に向けて準備を進める必要があるため、弊会として機関紙に連載記事を掲載するなど、マイナンバーへの理解を促し、啓蒙を図っております。

 本制度への対応の必要性も認識しつつ、以下のような問題点があると考えます。

・制度の広報や周知、内容への理解は十分でなく、導入準備が進んでいない事業者が多いのが実情です。

 同時に開始される法人番号制度についても周知が進んでおらず、2016年1月の利用開始までにおのおのの事業者が対応できる状況にはありません。

・現在、制度の企業のメリットとして従業員の税務に関わる源泉徴収票と給与支払報告書の提出事務手続きの簡素化といわれていますが、従業員が少数である中小企業・小規模事業者にとってメリットとは言いがたく、マイナンバー維持管理のための恒常的な負担が重くのしかかってきます。

・今回の番号法では、個人情報保護法よりも罰則の種類が多く、法定刑も重くなっています。

 中小企業・小規模事業者の多くは、マイナンバー対応のための人も費用も割くことが難しいのが現状であり、導入から日々の対応までには十分な期間が必要です。

〈意見1〉1.制度施行の延期を行うこと。

〈意見及び理由〉

 「帝国データバンク」(5月19日発表)の調査結果によれば、現在までにマイナンバー制度への対応を進めている(あるいは完了した)事業者は2割弱にとどまっており、事業者の約6割は対応を予定しつつも何もできておらず、全体の進捗状況は8・9%にとどまっています。

 マイナンバー管理などのコストについても、1社あたり100万円前後の負担が想定され、特に中小企業・小規模事業者では人材・コストの側面からも大変困難な状況であり、対応へのルール策定や物理的、技術的対策を十分にできない事業者が少なくありません。

 制度対応のために、中小企業・小規模事業者には十分な準備期間が必要と考えます。

〈意見2〉2.中小企業、小規模事業者の負担軽減となるよう制度および「特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(事業者編)」の改正を行うこと。

〈意見及び理由〉

 マイナンバー制度を維持管理していくためのコストは、中小企業・小規模事業者にとって恒常的な負担が大きいと考えます。

 制度そのものとガイドラインに適用除外事項や罰則規定適用の猶予期間を設けるなど、中小企業、小規模事業者の負担軽減を強く求めます。

〈意見3〉3.きめ細かな広報・周知を行うこと。

〈意見及び理由〉

 先の調査によれば、制度開始の4カ月前という時期ながら、法人番号制度自体、事業者の約4割に認知されていない状況です。また、制度についても、内容まで熟知している事業者は半数にも満たない状況です。

 現在の制度ではその適用特例事項などに不明確な部分が多く、また広く周知されておりません。

 簡易説明資料を作成している自治体もありますが、具体的にどのような対応が必要なのかなど、1社1社にいきわたるようにきめ細やかな広報を行うことを要望します。

〈意見4〉4.中小企業、小規模事業者向けに業界ごとの分かりやすい「手引書」を作成すること。

〈意見及び理由〉

 マイナンバー制度に対応するにあたり、外部コンサルタントの導入や対策システムの導入には多額の費用がかかります。事業者にとってこれらの費用を捻出することは非常に困難です。

 はじめて個人情報保護のルールや体制を確立する事業者に、中小企業・小規模事業者向けに業界ごとの分かりやすい「手引書」などをまとめてください。

以上

「中小企業家しんぶん」 2015年 6月 25日号より