元気な活動の原点は経営指針

東日本大震災の被災企業を訪問して

 東日本大震災から4年が経過しました。岩手、宮城、福島3県沿岸部「被害甚大地域」504社を対象に追跡調査が発表されました(2015年3月発表、帝国データバンク)。

 それによると、「事業継続」を確認できた企業は3622社(構成比72・4%)で全体の7割超になります。他方、「休廃業」している企業が1382社(同27・6%)を数え、4社に1社が実質的な活動停止に追い込まれたままになっています。

 同友会を見ると、ほとんど「休廃業」している企業はありません。同友会企業の多くは元気に活動しています。評者は久しぶりに被災地を訪れ、企業の視察に伺いました。まだ9社ですが、気づいた点をご報告したいと思います。

 訪問先は、福島同友会の(株)マツバヤ、まちづくりNPO新町なみえ、(株)かねまん、(株)三恵クレア、宮城同友会の(株)佐久、(株)マルセン食品、(株)ヤマウチ、丸平木材(株)、住研工業(株)の各社でした。

 第1は、各社は新しい仕事づくりに取り組んでいること。最新の同友会のデータによれば(中同協・企業環境研究センター、2015年4~6月期景況オプション調査)、仕事づくりに「取り組んでいる」47・5%、「検討している」35・2%、「検討していない」17・2%、という結果から見れば、同友会では当然の結論かもしれません。しかし、被災地の企業は真剣さが一歩先をいっているような気がします。

 例えば福島では、インフラ投資がどんどん進み、放射能汚染除去や除染作業だけでも数万人規模に膨らんでいます。現状では、警戒地域に立地している大型ショッピングセンターをゼネコンに休憩所として作業員向けに貸し出しています。毎日消費する水や食料だけで相当な規模になります。消費者は少なくなっても復興に関わる事業者向けのチャンスはあるのです。

 第2には、大震災で価値観・経営理念が進化したことです。震災前、経営指針には問題意識の反映がありましたが、取引先との「しがらみ」があって、はっきり言えない部分もありました。しかし、地震・津波ですべてがゼロとなり、新たな設備投資を思い切ってやることで、価値観をはっきりさせ、経営理念を進化させることができたのです。

 第3には、すぐに地域リーダーとして活躍し、復興の推進力となっていること。ある人は、津波に襲われている現場(高台)にありながら、地域のリーダーとして何をなすべきかが頭に浮かんだそうです。もっとも、地震保険に入っていたとのことで、気持ちの持ち方も違っていたのかもしれません。

 第4に、地域力、とりわけ地域の団結力に注意を払うようになったことが挙げられます。儲けることはいいが、1人で儲けていてはダメなこと。儲かった人は仕事を分け与え、力を合わせてやっていくことが大切であることです。

 第5に、原点は経営指針です。企業活動の原点は経営指針にあります。そして、自社の「物語」をつくれば、地域の「物語」も語れます。中小企業振興基本条例を軸に地域振興を語り合うときです。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2015年 7月 15日号より