【同友会景況調査(DOR)概要(2015年4~6月期)】かすかな上昇感でるも、多様な格差広がる

調査要項

調査時点 2015年6月1~15日
調査対象 2,451 社 回答企業 1,077社(回答率43.9%)(建設185社、製造業363社、流通・商業318社、サービス業204社)
平均従業員数 (1)38.4人(役員含む・正規従業員)(2)32.7人(臨時・パート・アルバイト)

※業況判断DI(デフュージョン・インデックス)は、好転企業が悪化企業を上回っている割合(%)をさす。DIが100に近いほど、好転企業の割合が高いことを意味し、DIが-100に近いほど、悪化企業の割合が高いことを意味している。好転、悪化が同数の場合は、DIは0となる。ほかの指標のDIも同じ考え方で作成されている。各水準DI以外、本文中特に断りがないものは前年同期比。

先行きに対する慎重さが見られる

 消費増税後、実質消費の水準が減ったまま戻らない。多くのエコノミストが抱いていた「時間が経過すれば自動的に消費が元に戻る」という先入観は的外れだった。ギリシャの債務問題と中国株の波乱相場も注視が必要であり、混乱が広がれば中小企業景気にも影響を与えかねない。

 DOR4~6月期調査は、足元の業況を示す業況水準DI(「良い」-「悪い」割合)は△6→△2と改善し、かすかな上昇感が見られる(図1)。しかし次期見通しは△2→△2と横ばいで、多くの経営者は先行きを楽観していない。

企業規模間での二極化鮮明

 業況水準DIを業種別に見ると流通・商業が△12→3と大きく好転したが、それ以外は横ばいか、わずかな改善にとどまった。企業規模別では100人以上が13→19、20人未満が△15→△9とそれぞれ好転したが、20人未満と100人以上で30ポイント近い差が開いている(図2)。

 このようにまだら模様であり、そろって力強い回復に向かう傾向は見られない。

売上高DI、経常利益、そろって改善

 前年同期比の諸指標は、消費増税実施直後との比較になるため、表面上は数値が良く見えることに注意が必要である。全業種の売上高DI(「増加」-「悪化」割合)は△6→2と8ポイント好転。次期は2→6と改善を見込む。経常利益DI(「増加」-「悪化」割合)は△8→0で8ポイント改善、次期は0→1である。消費増税後、初のプラス圏に入るとしているが力強さに欠ける。

借入資金需要、企業規模100名以上が反転

 資金繰りDI(「余裕」-「窮屈」割合)は4→10と余裕幅が拡大、「窮屈」と回答した企業は調査開始以来もっとも少ない割合となった(図3)。借入金利DI(「上昇」-「低下」割合、前期比)は、短期・長期とも低下、借入難度DI(「困難」-「容易」割合)も、短期・長期ともに前期並みを水準で推移している。

 対象企業のなかで借入金「有り」と回答があったのは77.7%。内訳を詳しく見ると、これまで借入に積極的な姿勢を見せてきた100人以上規模の企業が16→△10と急転している点が注目される。

仕入単価の緩和すすむ

 2015年4~6月期の仕入単価DI(「上昇」-「下降」割合)は、為替相場の安定による輸入物価上昇の一服や原油価格の急落などを背景に、42→39と3ポイント緩和された(図4)。一方、売上・客単価DI(「上昇」-「下降」割合)は8→8と変化がなかった。仕入単価も、売上・客単価も上昇の勢いを失いつつある。

人手不足感が若干緩和

 人手の過不足感DI(「過剰」-「不足」割合)は△34→△27と不足感が若干緩和した。実際の雇用は正規従業員数DI(「増加」-「減少」割合)は9→12と増加、臨時・パート・アルバイト数DI(「増加」-「減少」割合)は6→4と微減した。

実施割合は30%台を維持

 今期の設備投資実施割合は31.7%で、設備の過不足感DI(「過剰」-「不足」割合)は、△17→△16と1ポイント不足感が緩和した(図5)。設備投資自体は一定の水準にあるものの、設備投資に漂う不透明感・停滞感・投資躊躇感をどう打ち破るかが課題である。

「民間需要停滞」の指摘が再増加

 経営上における問題点は「民間需要の停滞」が34.4%と再増加しており需要停滞感は根強い。「税負担の増加」の指摘も増えている(図6)。

 消費増税不況はようやく底打ちの気配があるものの、新たな回復軌道への移行の兆候は乏しい。同友会運動の土台である経営指針に基づき社員の能力を創造的に実践化する課題が鮮明である。経営上の力点に対する指摘割合は、「新規受注(顧客)の確保」、「付加価値の増大」、「社員教育」、「人材確保」の上位4項目に変わりない。既存市場の閉塞感の下で「新規事業の展開」、「人件費以外の経費節減」の指摘割合が増している。

新しい仕事づくりに関する会員企業の声(「経営上の努力」記述回答より)

◎(1)エネルギーシフトを考慮した断熱リフォームパッケージの考案(エネルギーヴェンデ)、(2)空き家活性化のための施策(新規事業)、(3)ペットリフォームに向けた専門知識の習得、学習(付加価値リフォーム)(岩手、住宅リフォーム)

◎県内の学校給食向けの新商品を開発。今まではニュージーランド、パキスタンからの輸入品を使っていたが、地元産の魚を特殊な加工を行う事で利用できるようになった(静岡、水産加工)

「中小企業家しんぶん」 2015年 8月 5日号より