暮らしから「ゆとり」が消える!~日本の「中流」は全体の3分の1に

 厚生労働省が7月2日の公表した「平成26年(2014年)国民生活基礎調査」の結果は、日本人の生活から「ゆとり」が着実に失われてきているという内容でした。

 世帯の生活意識を見ると、「大変苦しい」が29・7%(前年比プラス2・0%ポイント)、「やや苦しい」が32・7%(同プラス0・5%ポイント)、「普通」が34・0%(同マイナス1・6%ポイント)、「ややゆとりがある」が3・2%(同マイナス0・7%ポイント)、「大変ゆとりがある」が0・4%(同マイナス0・1%ポイント)になりました(日経ビジネス:上野泰也のエコノミック・ソナー、2015年7月28日)。

 「大変苦しい」と「やや苦しい」を合計した「苦しい」という回答は今回の調査では62・4%になり、初めて6割を超えました。過去最多です。

 これに対し、「普通」という回答は34・0%にとどまりました。昔の日本では「1億総中流」ということがよく言われていました。 70年代前半には世論調査で9割以上が自分は「中流」に属していると答えたといいます。そして、1992年の調査では57・3%と、バブル経済が崩壊した直後に行われた調査でも「普通」という回答はまだ過半数でした。

 しかし、景気が定義上は拡張局面にあっても庶民の側では景気の回復がいっこうに実感されない状況が長く続き、生活意識は着実に悪化しています。「普通」という回答は2004年の調査で40%を下回り、今回は34・0%まで減少しました。「中流」にあたる層が全体の約3分の1まで減少してしまったということです。

 とくに、「苦しい」という回答が前年比2・5%ポイントも増え、「普通」の回答が前年比1・6%ポイント減った背景には「昨年4月の消費税引き上げ」があると厚生労働省等はみています(毎日新聞、7月3日付)。 実際、消費増税後、実質消費の水準が減って、大きく段差ができたままです。家計最終消費(除く帰属家賃)でみると、今の水準(2015年1~3月期実質GDP中、248兆9000億円)が、駆け込み需要前の2013年10~12月期の水準(256兆5000億円)に戻っていないのです。ピーク比で、「248.9÷256.5-1=▲2.96%」ですから、マイナス3%の段差ができたことになります。

 アベノミクスの下で現在の日銀の金融政策がやっていることは、景気の回復よりも前に、2%の物価上昇をまず実現しようとする、実験的な手法です。

 物価の上昇によって実質可処分所得が減少している家計の側から見れば、「安心して暮らせる国づくり」とは逆方向のことを、安倍政権・日銀が強引にやろうとしているようにしか見えないでしょう。

 3分の1まで減少してしまった「中流」を増やせる手立ては何か。アベノミクスを早急に転換しなければなりません。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2015年 8月 15日号より