仕事づくり、雇用、子育て支援を担う中小企業の存在感

同友会景況調査(DOR112号)2015年4~6月期オプション調査】仕事づくりと人材確保・子育て支援など

 中小企業は地域住民の暮らしを支え、地域経済の発展と質を高める中心的な担い手です。活力ある地域社会をつくるうえで、中小企業・小規模企業が蓄積している多様な技術・サービスを維持し、イノベーションを生み出すことがいっそう重要な課題です。こうした観点から、2015年4~6月期のDORでは対象企業の仕事づくりと人材確保、子育て支援などの現状と課題についてたずねました(回答企業は1077社)。

仕事づくりに前向き姿勢

 まず「仕事づくり」については、「取り組んでいる」が47・5%、「検討している」が35・2%と、合わせて82・7%が前向きな姿勢です(図1)。これを企業規模別にみると、「取り組んでいる」は5人未満で26・8%と3割を切っている一方、5人以上の全ての規模でおおよそ5割(図2)。他方、5人未満では「検討している」が54・9%にのぼることから、小規模企業での仕事づくりが広がるかどうかが注目されています。留意すべき点はDORの「経営上の力点」を企業規模別に見ると(図3)、5人未満では「得意分野の絞込み」が他の企業規模よりも比較的多くなっており、自社の強みを把握して戦略化する課題意識がうかがえます。自社の強みを明確にし、発展課題を明らかにする点で経営指針成文化・実践の推進が小規模企業でも求められているといえます。

新しい仕事づくりに向けた社員教育

 次に、仕事づくりに「取り組んでいる」、「検討している」企業の仕事づくりの内容について(複数選択)は、「販路開拓(自社が立地する地域圏内)の強化」が最も多く、「販路開拓(地域圏外、海外含む)の強化」とは10ポイント以上の差があります(図4)。「新事業を担う人材の採用・育成」は22・8%と存在感を示し、「新規事業の立ち上げ」の19・1%を上回りました。販路開拓や営業力強化、新商品・新サービス開発のうえで、それを担う社員教育の課題の重要性が意識されています。実際に「新年度の経営指針(中期計画共)の発表と、個人テーマ・数値目標を全社員が発表し、新しく取組んでいます。特に新規事業に2部門が加わり、体制を組み替えて、実践を開始しています(岡山、管工事業)」という企業もあるように、新しい仕事づくりに向けて経営指針を軸にして体制を構築し、社員と共に実践することが重要です。

人材確保に向けた新卒採用

 体制を構築するうえで計画的な人材確保が欠かせません。今回の調査で「人材確保に向けた対応」を聞いたところ(複数回答)、「新規採用の拡充」が59・1%でダントツ、継いで「中途採用の拡充」が44・5%であり、両者は15ポイント近い差が開きました(図5)。対象企業では計画的な新規採用が重視されていることがうかがえます。これを企業規模別に見ると、5人未満と5人以上10人未満では「中途採用の拡充」が「新規採用の拡充」を上回ったものの、10人以上の全ての規模では「新規採用の拡充」が上回っています(図6)。同友会らしく企業規模は小さくても計画的な新卒採用と、社員教育が重視されています。地域での人材定着・育成につながる貴重な貢献といえます。

4割の企業が産休・育休、時短勤務に積極的

 企業での家族形成・子育て支援(複数回答)については「出産休暇・育児休暇の取得促進」が38・1%、「勤務時間面での子育て支援拡充」が37・9%とほぼ同水準で並びました(図7)。産休・育休の取得促進、時短勤務の拡充に柔軟な姿勢が多く、仕事と子育てを両立できる企業づくりが進んでいます。こうした両立支援はその地域社会への貢献のみならず、企業にとっても優秀な社員が定着する、社員の就労意欲が上がる、業務体制を見直すきっかけになるなどの効果があると言われ、多くの企業に広がることが期待されます。

各地域で取り組みの発展を

 中小企業は経営指針を軸とした社員の採用・教育に取り組みながら「仕事づくり」を推進し、地域で安心して子育てできる環境の整備に貢献しています。こうした社会的役割を重視し、中小企業を主役とした社会づくりを進めようというのが中小企業憲章、中小企業振興基本条例の取り組みの1つの重要な側面です。こうした観点から各企業・地域での取り組みのいっそうの発展が必要です。

「中小企業家しんぶん」 2015年 9月 5日号より