自主・自立の精神は復興の中にも~東日本大震災の被災企業を訪問して(2)

 東日本大震災から4年半が経過しました。阪神大震災の事業者支援策と比較すると欠陥がありつつも格段に制度的な拡充があります。

 第1に、阪神大震災で被災した企業に対して仮設工場は中小企業高度化資金を利用するもので、入居企業は賃貸料を支払わなければなりませんでした。それに対して、中小企業基盤整備機構が完成させた仮設施設は、被災された中小企業者等に無償で貸与し、原則として1年以内に市町村に無償で譲渡する仕組み。岩手県・宮城県・福島県の3県では、393億円、610カ所で整備されました。

 第2に、阪神大震災ではグループ補助金のような民間事業者を直接補助する発想はありませんでした。東日本大震災ではグループ補助金制度として13次公募までで、619グループに対して国費3029億円(県費と合わせて4541億円)が交付決定されています。

 第3に、東日本大震災では債務の減免にも踏み込んだ二重債務問題対策も取られました。東日本大震災事業者再生支援機構による債権買取550件、904億円(377億円を債権放棄)で、産業復興相談センターとしては、債権買取311件に及びます。

8月、筆者は福島県を訪れ、6社の企業訪問に伺い、福島の復興魂に触れることができました。

 第1は、各社とも放射能と格闘しながら、新たな事業へ挑戦していること。藤田建設工業(株)では、県の復興公営住宅の提案型買取住宅方式の第1号にW・ALC(ウッド・エイエルシィ)工法が採択されました。無足場で工期が3カ月半でできる優れもの。鉄骨と木のハイブリット構造で人手不足に対応し、小規模な建設会社、工務店でも施行ができるので、地元に仕事を呼び込むことができます。

 第2は、従来の経営環境とは違った環境を生き抜き、立場を変えながらも展望をもっていること。榮川酒造(株)は磐梯山のふもとに広大な工場、事務所を構えます。当社は会津にありましたが、原発の風評被害に悩まされました。しかし、当社は地元の農業生産者と話し合い、お米をすべて地元産米に特化しました。これで、外へ逃げることなく、地酒屋としての地位が固まりました。福島魂を見る思いです。

 第3は、常に地域の発展のことを考えていること。

國分農場(有)はおもしろい。放射能が直撃地域の農産物は展望がないが、工業製品を畑で作ろうという発想でケナフを植え、セルロースナノファイバーを量産しようというもの。米栽培と同じ価格を保障したら、南相馬・いわきで栽培する人が出てきたと聞きました。

 第4に、同友会の協力関係やネットワークを生かそうとしていること。相馬ガス(株)は南相馬に立地しており、まちの衰退をどう防ぐかが課題です。中小企業振興基本条例を制定して、行政とやりとりしながら、市民と一緒に具体的なことを考えていくことではないかとします。当社としては、電力・ガスの自由化にどのように対処するか。住生活とカーライフの面がありますが、同友会の協力関係が大切になってきます。

 同友会の自主・自立の精神、ネットワークは震災復興でも大変有効であることを確信しました。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2015年 9月 15日号より