アジア全体を見て海外進出!~中同協企業連携推進連絡会 タイビジネスマッチングレポート

 2015年8月31日~9月3日、タイ・バンコクのサシン経営大学院にて、中同協企業連携連絡会とビジネスマッチングセミナーが開催されました(本紙2015年10月5日号に報道記事掲載)。参加者は9同友会と中同協から31名、オブザーバーなど総勢40名ほどが集まりました。参加した瀬野弘貴・新潟同友会事務局次長のレポートを紹介します。

中同協企業連携推進連絡会

 サシン経営大学院の日本センター所長を務められているのが藤岡資正氏。日本企業のタイ進出支援コンサルティングなどを行っており、今回のセミナー講師として演台に立ち報告しました。「アジア進出を考える経営者は、タイだけでなく、アジア全体を見てリスクを考えなければならない。そして、大切なことは『どこを見ているのか、どこから見ているのか』を社員とのコミュニケーションで伝えていかなければならない。」という言葉が印象に残ります。

 タイは今後、2010年から2050年の間で、3倍~10倍の経済成長を遂げていくと予測されています。縮小する日本市場から脱却し、アジア新興国市場を取り込むということは、自然な流れです。

 日本は、アジアで一番早く縮小経済を経験し、「地球温暖化」「高齢化」「需要不足とデフレ」という3つの深刻な課題に直面しています。これらは、いずれアジアの新興国を含むすべての国が直面する課題です。課題先進国の日本は、技術、サービス、制度をうまく組み合わせることで、この問題を解決し、その過程で新産業や雇用を創出して、それをアジア圏と関わりの中で伝えていくことができます。

 また、タイはアジアの中心にあり、隣国が国としてまだ若いという利点もあります。加えて、加盟しているASEAN諸国では、関税がかかりません。そういった意味で非常に場所が良いのです。日本の人口1・3億人に対し、ASEANは6億、中国は13億、インド12億、合計30億人以上の市場がアジアにはあります。分かっていることは、将来が違うということです。

*事例紹介*

(1)ソフトウェア会社(東京同友会会員)

 バブル崩壊後、ビジネスの可能性を求めてタイへ。CG、映像処理を行う。タイを選んだ理由は、(1)アクセスの良さ(2)文化が近い(3)経済政策が安定(4)治安(5)人件費の安さ の5点。

 ただ、タイに会社を構えることで現地での採用が難航した経験があります。社内の言葉が日本語なので本社と連携がはかれています。

(2)建築金物製造会社(大阪同友会会員)

 スイング扉に使う金具を製造。タイに貸オフィスを持ち、月に1回1週間程度タイを訪問しています。日本の会社は、経営者の不在を補うために互いにコミュニケーションを取るようになりました。

 タイでは同様の商品が出回っていますが、値段交渉はせず、価値を伝えてきた成果が徐々に仕事がつながってきています。タイにオフィスを構えたことも事業の展開に非常に有利になりました。

(3)大手住宅建築会社(東京、会員外)

 2008年からサシン大学院でマーケティングを手伝ってもらい、現在ではタイで年間4000棟を建てるまでに成長。ターゲットは上位35%の富裕層で、物件の大半はタイ人を対象にしています。仕事場は、日本人・韓国人・タイ人など多国籍。広告戦略に重点を置いています。

 日本の縮小経済は、パイの取り合いばかりの小さな世界と言えます。バブル崩壊後の日本では縮小経済の中でいかに生き残るか、いかに地域活性化するかが求められます。

 タイは、インフラが整備され、高速道路や高架鉄道も張り巡らされ、屋台では多くの子どもを抱えた女性が働いています。隣国においても陸続きで、発展途上の30億人市場があり、2050年までに3倍~10倍にも経済が発展すると予想されています。

 このビジネスマッチングの翌日、千葉県の森田健作知事がタイに赴き、サシンに寄り、バンコクの空港で「千葉フェア」を行っていました。すでに、各地ではアジア進出に本腰を入れている状況です。

 まずはアジア視察を検討・実施して、早い段階で日本の地元企業が連携していけるような仕組みづくりが必要だと感じました。

(同友にいがた2016年1月号より転載)

「中小企業家しんぶん」 2016年 2月 5日号より