【平和特集】誰もが自ら未来を決められる社会へ

(有)やんばるライフ 専務取締役 比嘉ゑみ子(沖縄)

 8月15日は日本の終戦記念日。「戦争」について、「平和」についてマスコミやメディアが最も取り上げ語られる日である。

 ちなみに、沖縄の終戦は6月23日、この日は慰霊の日として条例を定め、沖縄だけが公休日として設定している。唯一陸上戦のあった沖縄は、73年経った今でも戦争の痕跡は絶えない。

 加えて、日本復帰はしたものの米軍基地の75%が存在する。事あるごとに地位協定の改定を求め、沖縄のアイディンティティを訴えても、いまだ、沖縄軽視があるように思える。

 改めて、「平和」について考えてみると、戦争を起こさないことだけが平和ではないと思う。戦争や争いごとはない方がよいに決まっているが、社会の中でも、公正を欠く不条理なことや、偏見や差別による人権侵害が絶えることはない。人は、自らの優越性を誇示し、権威主義に陥りやすい。富の格差は拡大し、貧困問題が起きる、沖縄の子どもの貧困率は全国平均の約2倍。なぜか基地が集中している地域の数字が高い。

 ある海外の平和学者が、戦争を「直接的暴力」とし、社会的背景によるところの人権侵害などを「構造的暴力」と表現している。戦争がない状態でも決して平和とは言えない。いじめ、虐待、病、介護、貧困、課題は山積みで、「生活と権利が保障され、誰もが自ら未来を決められる社会」から乖離(かいり)していくような気がしてならない。

 2カ月ほど前、沖縄の地元紙に掲載された「私宅監置」跡の存在、精神障害の方の受けた、家族からの迫害、虐待…。(私宅監置は、復帰前は公認されており、1972年に廃止された。)

 しかし、昨年、関西のある市内で現代の私宅監置が発覚し、世間を震撼させた。

 相模原で起きた施設入所者数名が殺害された事件、障害があるということで受ける人権侵害や差別、暴力は枚挙にいとまがないほど起きている現実がある。

 「子ども、高齢者、障害者がどのように暮らしているかがその地域や社会の試金石になる」と言われている。

 私たち中小企業家同友会の経営者が「人間尊重の経営」「人を生かす経営」の総合実践をめざすうえで無視できない現実が地域で起きている。

 今こそ、何のためにを問う経営をしっかりと実践しなければと思う。

 小学校に入学して最初にならった音楽の教科書の歌は「さいた、さいた、チューリップの花が……あか、しろ、きいろ、どの花みてもきれいだな」この意味を今こそ考える。

「中小企業家しんぶん」 2018年 8月 15日号より