同友エコ大賞受賞企業「宮大工として生きる」~すなわち、品質力、人間力、技術力へのこだわり~(有)匠弘堂 代表取締役 横川 総一郎氏(京都)

環境経営で企業革新を

中同協では、同友エコ2019として、全国に「環境経営・エネルギーシフト・SDGs」に関するアンケートを実施。638社からのエントリーがあり、29社が同友エコ大賞などを受賞しました。大賞受賞企業の実践を紹介します。

 (有)匠弘堂は、京都市に本社と工房を構える社寺建築専門の工務店、いわゆる「宮大工」の職人集団で、2001年に社寺建築業界に新規参入した新しい会社です。横川氏は大学では機械工学を学び、卒業後、大手家電メーカーに就職しました。製品は3~4年持てば十分という考え方で大量生産大量消費のものづくりに疑問を感じ、全く反対の1000年つなぐものづくり=日本独自の伝統文化である社寺建築業界に転身しました。

 匠弘堂の経営理念、行動指針には、当社初代宮大工棟梁「故岡本弘棟梁の教え」が根底にあります。例えば、「よい技術を教えるよりも、よい人を育てることが最優先」「見える所は当たり前 見えない所ほど気配りをせなあかん それが建物を強固にし 100年、200年と美しさを保つことができるんや 解体しても 恥ずかしぃない 仕事をせなあかん」など、宮大工としての使命感を現在の若い職人集団が引き継ぎ「本物の仕事」を追い求めています。

 国産木材(特に奈良県吉野産桧)をエンドユーザーに提案し使っています。木材の供給者である林業を復活させることは、森林の環境保全につながり、木造建築文化を未来につなげることととらえています。横川氏は「工業製品を使わず、低エネルギー低負荷のものづくりをめざす。日本の伝統木造技術はある意味でエコの象徴ともいえるのではないでしょうか」と語ります。また、解体修理の際も使えるものは再利用するようにし、部分コストではなくトータルコストを念頭に置いてアドバイスするよう心がけています。

 文化的価値の高い古い建造物を修理修復し再利用することはSDGsの理念にマッチしています。同社では「宮大工の匠の技術と精神」を次世代の若い世代に広く知ってもらうために仕事の見える化を図り、学習の一環として「職場見学」「一般公開」を積極的に受け入れ、社会貢献を行っています。

「中小企業家しんぶん」 2020年 1月 25日号より