【同友会景況調査(DOR)概要(2022年4~6月期)】指標は好転するも、懸念は募る~原材料費等の仕入額は急上昇へ

〈調査要項〉

調査時点 2022年6月1~15日
調査対象 2,200社
回答企業 892社(回答率40.5%)(建設158社、製造業276社、流通・商業256社、サービス業195社、その他7社)
平均従業員数 (1)38.2人(役員含む・正規従業員)(2)33.8人(臨時・パート・アルバイト)
※業況判断DI(デフュージョン・インデックス)は、好転企業が悪化企業を上回っている割合(%)をさす。DIが100に近いほど、好転企業の割合が高いことを意味し、DIが-100に近いほど、悪化企業の割合が高いことを意味している。
 好転・悪化が同数の場合は、DIは0となる。ほかの指標のDIも同じ考えで作成されている。各水準DI以外、本文中特に断りがないものは前年同期比。

国内景況は踊り場、中小企業は依然マイナス圏

6月8日に内閣府が発表した2022年1~3月期の国内総生産(GDP)改定値は年率換算で0.5%減となりました。マイナス成長は24半期ぶりです。

日銀の6月短観(全国企業短期経済観測調査)では、大企業製造業の業況判断指数(DI)は前回調査から5ポイント悪化してプラス9となりました。中小企業製造業は横ばいで△4、非製造業は5ポイント好転の△1で、依然としてマイナス圏にあります(図1)。

DORは今期改善傾向となるも、次期は悪化、横ばい見込み

DORは今期全体的に改善傾向を示しました。業況判断DI(「好転」-「悪化」割合)は△7→6と好転。ただし、足元の業況を示す業況水準DI(「良い」-「悪い」割合)は△12→△3と改善していますが水面下にあります。

業況水準DIを業種別でみると、建設業は△10→△14、製造業は△14→△9、流通・商業は△17→△3、サービス業は△6→12と建設業をのぞく3業種で改善、サービス業は唯一プラス水準になりました。建設業は継続的かつ急激なコスト増の影響を受けて厳しい状況が続いています(図2)。今期は地域経済圏、企業規模で全体的に改善しましたが、次期(2022年7~9月期)は業種や地域、企業規模によらず悪化、横ばい見通しとなっています。

8期連続で仕入単価上昇、調査開始以来かつてない水準に

2020年4~6月期以降、仕入単価の上昇が止まりません。仕入単価DI(「上昇」-「下降」割合)は、68→81とさらに大幅な上昇となりました。なかでも建設業(92)、製造業(94)はいずれもDI値が90台を記録しました。30年を超えるDORでもまれにみる強い上昇圧力となっています。

次期はわずかながら仕入単価の上昇圧力が弱まり、売上・客単価は上昇するとの心強い見通しもありますが、価格転嫁は引き続き喫緊の課題となっています(図3)。

借入金利上昇、借入難度のタイト化が進む

資金繰りは前期同様の水準、借入ありの割合は77%で前期から0.9ポイント低下、借入金の増減DI(「増加」-「減少」割合、長期:△21→△28、短期:△14→△21)は長期、短期ともに借入金を減少させています。

借入金利は長期、短期ともに継続的な上昇圧力を受け、借入難度も余裕感が失われつつあります。無利子無担保融資の返済が始まる中で、金融機関から提示される金利が高くなり、金融機関の貸出態度もタイト化していることが示されています(図4)。

設備不足感は緩和、人材不足感は高止まり傾向

今期は設備不足感が弱まりました。設備投資実施割合も前期で見込んでいた計画割合を下回り、やや減速傾向が見られました。一方で設備投資の実施目的では「新製品・製品高度化」といった前向きな投資も増えています。

雇用面では、正規従業員数DI、臨時・パート・アルバイト数DI(両指標ともに「増加」-「減少」割合、4→11、△3→4)は増加しました。所定外労働時間は建設業と製造業で減少し、流通・商業とサービス業では増加となりましたが、いずれも減少超過となっています。また、人材不足も高止まり傾向が続いています。

価格転嫁への取り組みに加え人材に関する対応強化を

今期、経営上の問題点では「仕入単価の上昇」が指摘割合のトップで8期連続の上昇となりました。特に製造業と建設業が突出しています。同様に「仕入先からの値上げの要請」も上昇が続いており、業種、地域、規模を問わずその影響は広範囲に及んでいます。また、「従業員の不足」(27%→28%)は全体では同水準を推移して指摘割合も3位となっていますが、建設業(32%→37%)とサービス業(33%→39%)は上昇しています(図5)。

経営上の力点は「新規受注(顧客)の確保」、「付加価値の増大」が過半数を超え、2大重点項目として注力されていますが、今期は「人件費以外の経費削減」と「社員教育」が増えました。

原料費や資材、燃料、電気代などが高騰する中で、継続した価格転嫁の交渉に加え、商品・サービスの付加価値向上、財務体質強化など、さまざまな経営努力を行う企業の取り組みが多く寄せられています。地域を支える中小企業として、経営継続を前提に政府の支援策を活用しながら、働き方改革やベースアップなどの経営課題への不断なる挑戦が今こそ求められています。

<会員企業の取り組み~記述回答から>

○仕入れ商品の欠品により売上機会の損失があり、細かな在庫調整と社員各自に資金繰りの意識を持つように試みています(北海道、流通・商業)
○部材価格の高騰及び納期の遅れなど、マスコミ、業社へ依頼し現状と6 カ月後の予想を調査し周知徹底を図っている(長野、建設業)
○事業再構築補助金を利用して、従来の立地、既存のビジネスから、製造販売の新分野にチャレンジ中(大阪、サービス業)
○新規採用、理念、経営指針の見直し、社内DX 化を強化するため情報収集、利益確保のため業務単価の見直しと顧客交渉を実施、当面単価見直し交渉は継続(東京、サービス業)
○原材料高により販売価格の値上げをした。原価率適正化に向けて計量などを徹底して収益性を確保する。人材育成に力を入れ、人時売上高を向上し、収益性を向上する(香川、サービス業)

「中小企業家しんぶん」 2022年 8月 5日号より