【変革と挑戦】企業と学校が連携して地域の未来をつくる【岡山】

 岡山同友会は、8月4日に岡山市内で開かれた「第52回・岡山県高等学校商業教育研究大会」に協力団体として初参加し、代表理事と教諭らによるパネルディスカッションと会員を交えたグループ討論を行いました。

 大会は、商業高校や商業学科を設ける高校など32校が加盟する県高等学校商業教育協会の主催で毎年開かれているもの。今年は「超スマート社会の到来に対応し、地域の未来を創る商業教育の実現」をテーマに、教諭や講師など約110名と同友会関係者(事務局と社員を含む)約20名が参加しました。

 「中小企業家同友会と考える人材教育」と題されたパネルディスカッションは、「人材育成に関する学校と企業の現状と課題」「両者の考え方の共通点と相違点」「持続可能な地域を担う人材を育成する上で私たちに求められていることは何か」の3つのテーマに沿って進行。企業経営者(岡山同友会の代表理事3人)と教頭・副校長の3人が、それぞれの立場を代表して意見を述べました。

 学校から「生徒数の減少や進学希望者の増加などの環境変化への対応が急務。めざすべき将来ビジョンを地域・学校・企業で共有できていない」との認識が示されたのに対し、企業側からは「小中学校の段階から私たちが積極的に学校に関わり、働くことの意義を子どもたちに伝えていく必要がある」などの意見が出されました。また「今、社会に求められているのはどのような人材か」との質問に対しては、「まず課題そのものを自ら発見する姿勢と力が必要。その上で与えられた条件を組み合わせて最適解を導き出す能力が重視されている」と回答。そして「先生がもっと地域や地元企業のことを知り、生徒一人ひとりの特性に合った進路指導をお願いしたい」などと続けました。

 その後、「岡山の将来を担う人材を育成するために商業教育と企業は何ができるか? またどのような連携が考えられるか」をテーマに、全14卓でグループ討論を実施しました。各テーブルでは、「私たち教員が企業のことを知らないし、企業も商業教育に関心がない」「生徒の多くは求人票を読んでも具体的な働き方をイメージできない。結局は親の意向で就職先を決めてしまう」―など、先生たちの切実な声が上がりました。一方、経営者からも「大手企業が大半の生徒を一括して囲い込んでしまうので人材を確保できない」「本来は手段であるはずの資格取得が目的化し、商業教育の本当の目的を生徒や親に伝えきれていないのではないか」などさまざまな意見が出されました。

 グループ発表後のまとめでは、岡山東商業高校の富田耕成副校長が「振り返ってみると私自身も今まで生徒に働く目的についてはほとんど語ってこなかった。仕事とは決してお金や自分のためだけのものではなく、周りの人を幸せにするものでもあるということを伝えていきたい」と話しました。また岡山同友会の高橋正志代表理事は「学校は地域の中にあるが、学校の中には地域がない。私たちがもっとお互いのことを知り、未来を託す子どもたちのために持続可能な地域の土台をつくっていきましょう」と呼びかけました。

 閉会後、参加者からは「企業が人材育成に熱心に取り組んでいることに驚いた。これなら安心して生徒を送り出せる」「先生たちの熱い思いに触れて刺激になった」などの感想とともに交流の継続を希望する声が多数寄せられました。

 その後、岡山同友会と協会は今後の連携について協議し、会員と会員企業の社員を対象にした日商簿記検定受験講座の実施を決定。11月の開講に向けて受講者を募集しているところです。

「中小企業家しんぶん」 2022年 10月 5日号より