グリーントランスフォーメーションと環境経営

 持続可能な社会に向けてSDGsなどの取り組みが加速し、グリーントランスフォーメーション(GX)という言葉もよく聞くようになってきました。

 気候変動の主な要因となっている温室効果ガスの排出量を削減しようという世界の流れがあります。気候変動を引き起こす大きな要因は、人間活動による温室効果ガスの排出量、いわゆるCO2排出量の増加と言われています。産業革命以来、世界のCO2排出量は右肩上がりで増え続けています。気候変動や温暖化を食い止めるには、この温室効果ガスの排出量をどう減少させ、抑えるかがとても重要なこととなっています。

 気候変動の国際的な議論が始まったのは約30年前の1992年、ブラジルで開かれた地球サミット(国連環境開発会議)で「気候変動枠組条約」が採択。この条約に基づいて地球温暖化対策に関する国際会議「国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)」が開かれるようになりました。

1997年のCOP3で採択された「京都議定書」では、温室効果ガス排出量の削減について国際的な数値目標が初めて定められます。日本や米国、EUなど先進国に温室効果ガス排出量の削減を義務づけ、全体では1990年比で少なくとも5%の温室効果ガスの排出削減をめざすことが決まりました。

 2015年のCOP21で採択された「パリ協定」は、先進国だけでなく、気候変動枠組条約に加盟している196カ国すべてが温室効果ガスを削減するために行動すべきと定められ、CO2排出量のトップで約3割の中国と、約15%を占めるアメリカも加わりました。世界全体の長期目標として、「世界の平均気温の上昇を産業革命前と比べて、2度より十分低く抑えるとともに、1・5度に抑える努力を追求する」ことに合意したのです。その潮流はさらに加速し、2021年に英国で開かれたCOP26では、『グラスゴー気候合意』を採択。「パリ協定」が掲げる目標を改めて確認するとともに、石炭火力発電に関して、合意文書案「段階的廃止」の表現に対し、インド、中国が反対し、「段階的に削減」と表現を弱める 形での合意となりました。

 こうした世界的な潮流を受けて、企業において気候変動問題やCO2削減の取り組みがより一層求められています。そこで、企業では温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」をめざすことが求められてきています。グリーントランスフォーメーション(GX)とは、そういった気候変動やCO2削減の取り組みをチャンスととらえ、排出削減と競争力向上の両立をめざす取り組みの中で、企業を変革していこうという取り組みです。

 同友会では、2009年より同友エコを実施。また「エネルギーシフトで持続可能な社会をつくりましょう」を基本理念とした「中小企業家エネルギー宣言」は、パリ協定より前の2013年、第48回定時総会にて採択しています。同友会は世界に先駆けて、グリーントランスフォーメーション(GX)を提唱していると言えます。

 同友エコの実践企業からは環境経営に取り組むことで強靭な企業づくりが進むという事例もありました。まさしくグリーントランスフォーメーション(GX)、同友会のいう環境経営は企業を変革するために重要な戦略として考えるべきなのです。

 各同友会では、「環境経営・エネルギーシフト・SDGs」に関するアンケート(同友エコ)を実施しています。回答すると自社の環境経営の実践状況がわかるアンケートとなっています。この機会にぜひチェックしてみてはいかがでしょうか。

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「中小企業家しんぶん」 2022年 12月 15日号より