少子化問題を考える

 日本の少子化に歯止めがかかりません。昨年の出生数は80万人を下回る可能性が大きいことが報じられ、波紋を広げています。1970年代は、年間出生数は200万人を超えていましたので、その減少ぶりは衝撃的です。政府も「従来とは次元の異なる対策」が必要と危機感を強めています。

 日本・フランス・ドイツ・スウェーデンの4カ国を対象に行った調査によれば、自国が子どもを生み育てやすい国だと思うか聞いたところ、「とてもそう思う」の割合はスウェーデンが80・4%と非常に高く、次いでドイツ(26・5%)、フランス(25・5%)が2割台半ばなのに対して、日本は4・4%と圧倒的に少なくなっています(内閣府「2020年度少子化社会に関する国際意識調査」報告書)。日本は子育てがしにくい国になってしまっているのです。

 なぜ日本はそのような国になってしまったのでしょうか。1月24日に開かれた政府の経済財政諮問会議に提出された有識者議員提出資料をみると、少子化の原因や背景が見えてきます。

 第1に、長年低い賃金上昇や非正規雇用の増加により若年世代の所得が低くなっていることです。OECDによれば2020年までの30年間の実質賃金の伸びは、世界平均でも33%増なのに対して日本は4%増と、ほとんど横ばいです。

 第2に、国際的にみて日本の男性は長時間労働の結果、家事時間が極端に短く、女性の家事への負担が重くなっていることです。1日あたりの労働時間(正規労働者以外も含む)は、日本の男性が約451分なのに対してフランス、スウェーデン、ドイツの男性は約235分~313分。逆に家事時間は日本の男性が約40分に対して、他の3国は約134分~171分と差は歴然です。

 第3に、日本は政府の子育て支援の支出が少ないということです。出生率が高い国では、家族関係社会支出(児童手当、出産・育児休業給付、就学前教育・保育など)のGDP比が日本よりも1%程度高くなっています。また、出生率が高い国には高等教育への公的支援が手厚い国が多くみられ、日本は最も少ないグループとなっています。

 政府も「従来とは次元の異なる対策」を進めることを打ち出したのですから、このような問題を抜本的に解決することが期待されます。前出の内閣府報告書でも、育児を支援する施策として何が重要だと思うか聞いたところ、日本では、「教育費の支援、軽減」が69・7%と最も高く、「子育ての経済的負担を軽減するための手当の充実や税制上の措置」(49・3%)、「雇用の安定」(45・4%)の順となっています。これらの対策が喫緊の課題と言えます。

 また子どもを生み育てやすい国だと思っている人が最も多かったスウェーデンでは、その理由としては「教育費の支援、軽減」と「育児休業中の所得保障の充実」が高い割合を示しています。また、「子どもを生み育てることに社会全体がやさしく理解があるから」と「地域で子育てを助けてもらえるから」が他の3カ国に比べて高くなっています。

 少子化は国の未来を左右する重要問題です。「次元の異なる対策」を本格的に進め、社会や地域全体で子育てを考える方向へ大きく転換することが求められていると言えます。

(KS)

「中小企業家しんぶん」 2023年 2月 15日号より