【同友会景況調査(DOR)概要(2022年10~12月期)】指標は好転も23年は世界的不況の兆し、中小企業は高付加価値化に挑戦しよう

〈調査要項〉

調査時点 2022年12月1~15日
調査対象 2,163社
回答企業 815社(回答率37.7%)(建設145社、製造業243社、流通・商業246社、サービス業173社、その他8社)
平均従業員数 (1)40.9人(役員含む・正規従業員) (2)35.3人(臨時・パート・アルバイト)
※業況判断DI(デフュージョン・インデックス)は、好転企業が悪化企業を上回っている割合(%)をさす。DIが100に近いほど、好転企業の割合が高いことを意味し、DIが~100に近いほど、悪化企業の割合が高いことを意味している。
 好転・悪化が同数の場合は、DIは0となる。ほかの指標のDIも同じ考えで作成されている。各水準DI以外、本文中特に断りがないものは前年同期比。

国内景気は内需中心に持ち直すが、景気減速に警戒を

12月8日に内閣府が発表した2022年7~9月期の国内総生産(GDP)の改定値は年率換算で0.8%減と速報値(1.2%減)から上方修正したものの、4 四半期ぶりのマイナス成長となりました。

一方、経済活動の正常化によって内需を中心に持ち直したことにより、日銀の12月短観(全国企業短期経済観測調査)では、大企業製造業の業況判断指数(DI)は7で前回調査から1ポイント悪化しましたが、大企業非製造業、中小企業製造業、非製造業で改善しました(図1)。

DORは今期改善、次期は悪化見込み

DORでも業況判断DI(「好転」-「悪化」割合)は4→8と4ポイント上昇、足元の業況を示す業況水準DI(「良い」-「悪い」割合)も△7→8と改善しました。業況水準DIを業種別でみると、建設業は5→11、製造業は△17→5、流通・商業は△12→4、サービス業は6→15と全業種でプラス水準になり、地域経済圏、企業規模においても同様に改善しました(図2)。今期は売上高、経常利益も上昇し、採算水準DI(「黒字」-「赤字」割合)も24→35で黒字化が進みましたが、次期(2023年1 ~ 3月期)はおおむね悪化見通しとなっています。

仕入単価の高止まり続く

原材料費価格などの高騰は今期も上昇を続け、仕入単価DI(「上昇」-「下降」割合:82 → 84)は1990年の調査開始以来、過去最高値を2期連続で更新しています(図3)。

売上、客単価DI(「上昇」-「下降」割合:44→48)も上昇していますが、「原材料高騰分の価格転嫁を進め、人件費電力費等固定費高騰分は吸収してきた。これが利益を圧迫していることが明らかだったので、一律の値上げ交渉を進めている。なかなか理解が得られず営業が苦労している(愛知、製造業)」というように、度重なる価格の上昇により価格交渉が難しくなっている現状もあり、価格転嫁対策は重要課題となっています。

資金繰りは2期連続で余裕感弱まる

資金繰りDI(「余裕」-「窮屈」割合:22→19→17)は2期連続で余裕感が弱まり、今期はサービス業の余裕感喪失が大きく影響しました。地域経済圏別では、関東と近畿で余裕感が大きく失われました。借入ありの割合は77%で、長期資金の借入が減少しました。借入金利は長期、短期ともに前期までの上昇圧力はわずかに和らぎましたが、「ゼロゼロ融資」返済とプロパー融資への置き換えが本格化することから、金融環境の悪化も不安視されています(図4)。

人材不足対策と設備投資への動きも

雇用面では正規従業員数DI、臨時・パート・アルバイト数DI、所定外労働時間DI(いずれも「増加」-「減少」割合、4→7、0→4、△5→2)が増加し、建設業、サービス業を中心に人材不足感が再び高まりをみせています。

また、製造業がけん引役となって設備投資実施割合は上昇、前期で見込んでいた計画割合を上回りました。設備投資の実施目的では、久々に「合理化・省力化」が「維持補修」を上回るなど、本格的な人材不足対策として資本装備率を高める動きもみられます。

「付加価値の増大」、「人材確保」に力点

「仕入単価の上昇」が引き続き最大の経営上の問題点となっているほか、「従業員の不足」と「人件費の増加」も増加傾向にあります。

経営上の力点では「新規受注(顧客)の確保」、「付加価値の増大」、「人材確保」、「社員教育」に注力している傾向は変わりませんが、2020年以降「付加価値の増大」、「人材確保」へのウエイトがやや高まっています。

世界経済の変調が予見される2023年、経営理念に立ち返って全社員で共有し、付加価値を高める努力がいっそう求められています(図5)。

<会員企業の取り組み~記述回答から>

・生産性を向上できるような配置・動線を社員主導で取り組んでもらった。残業も少なくなり、利益がアップした(青森、建設業)
・配車から請求までの業務をシステム化し業務の効率化に取り組んでいる(秋田、運送業)
・新分野(ビール醸造)に取り組み、仕込、販売だけでなく、製造→販売のしくみを構築。新しい分野でこれからの環境に対応していく(大阪、サービス業)

「中小企業家しんぶん」 2023年 2月 15日号より