「いま、私たちにできること」に地域の視点で取り組む店舗づくりを 岡山トヨタ自動車(株) 代表取締役社長 梶谷 俊介氏(岡山)

連載「わが社のSDGs」

SDGs(持続可能な開発目標)は、「誰1人取り残さない」持続可能な社会の実現をめざす世界共通の目標です。2015年の国連サミットにおいてすべての加盟国が合意した「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の中で掲げられました。2030年を達成年限とし、17の目標と169のターゲットから構成されています。
新連載「わが社のSDGs」では、経営理念をもとにSDGsに取り組む企業の事例を紹介します。第1回目は、岡山トヨタ自動車(株)(梶谷俊介代表取締役社長、岡山同友会会員)の取り組みです。

 岡山県内で新車・中古車の販売、自動車の整備修理を行っている岡山トヨタ自動車(株)では、2021年12月に「岡山トヨタ自動車SDGs宣言」を発表しました。

 これは地域に根差した企業として、地域の課題に真摯(しんし)に向き合い全社一丸で取り組んでいくということから作られたものです。梶谷社長の発信からスタートしたものですが、議論は社員を中心としたSDGs推進メンバーが行い、カードゲームなどを使ってSDGsとは何かを学ぶところから始まり、会社の方針とSDGsの紐づけなどを経て、約5カ月をもって完成しました。

 もともと全社員COOL CHOICE宣言を実施するなど、地域貢献・環境活動に重きを置いていた同社にとってSDGsに取り組むことは社員にとっても理解しやすいものだったと話します。

 この中では2030年に向けたビジョンとして岡山トヨタの6大ミッションが掲げられ、達成までのロードマップを示しています。(1)環境負荷低減に向けた取り組み(エコカーの推進)、(2)岡山県交通事故死亡ゼロ社会に貢献する、(3)違う価値観を認め合い補い合い成長できる職場づくり、(4)環境負荷低減に向けた取り組み(COOL CHOICE宣言を行動する)、(5)岡山トヨタの資源を活用した課題解決のお手伝い、(6)岡山トヨタのファンづくり(みんなで地域を豊かにしよう!)。このミッションに基づき、県内14の店舗でさまざまな取り組みが展開されています。

 「古着deワクチン」の取り組みに参加し、お客さまから古着を回収。それらは専用業者が輸出し、カンボジアなどを中心に現地で販売されることで雇用を生みだし、1点売れるごとに1人分のワクチンが寄付されるとのこと。また、来店したお客さまに生活の中で取り組んでいるSDGsを書いてもらい、共有できるブースを設置。そのブースには、店舗周辺のDIGマップも置かれ、来店時に周辺地域の防災情報を得ることができます。

 高校と連携している店舗では、学生と牧場とがコラボして開発したジェラートを店内マルシェで販売しています。他にも特別支援学校の生徒が作成した商品の販売や、古本募金など各店舗での活動は多岐に渡ります。

 岡山トヨタ自動車では、各店舗の店長が同友会に入会しており、1つの店舗を経営する経営者という意識のもと同友会で学んでいます。そうした店長を中心に自分たちの店舗では何ができるのかを考え、それぞれの店舗でできることを独自に展開しているのです。

 そしてその取り組みは各店舗と共有され、活動が別の店舗、地域にも広がっていくと梶谷氏は話します。

 SDGs宣言に書かれている「多様な人々をつなぎ、共に育ち合い、笑顔あふれる安全で快適な地域づくり」をめざし、それぞれの店舗がその地域で取り組める活動を展開することで、古着や古本を届けに来てくれるお客さまやアイスを買いに来るお客さまなど、SDGsを通した店舗づくりが、ただ車を販売・点検修理する店舗から、地域のコミュニティとして地元の人が訪れることができる店舗となっていて、それが売上にもつながっています。

 SDGsは、さまざまな課題が網羅された中で「誰1人取り残さないこと」が強調されており、大きな目標は人権尊重の社会をめざすことにあります。それを地域の視点で捉え、取り組むことで地域の多様な人とつながることができるようになります。その中でも、特に高校生など、若い人ととのつながりを通じて、その価値観や柔軟な発想に触れることは企業として大きな価値があります、と梶谷氏は強調します。

 これからも岡山トヨタ自動車は2030年ビジョンに向けて、お客さま、社員そして地域とともに持続可能な社会をめざして取り組んでいきます。

会社概要

設立:1945年
従業員数:347名
事業内容:新車販売、各種中古車販売・買取、自動車整備・修理、保険代理店他
URL:https://okayamatoyota.com

「中小企業家しんぶん」 2023年 3月 5日号より