初任給高騰に備える

 初任給は20万円台から2019年に男性21万2,800円、女性20万6,900円と上昇しはじめ、2021年には男性22万6,700円、女性22万3,900円(表1)と上昇傾向はとまらず、23年はさらに高騰する可能性があります。

 人手不足対応から、東京の大卒初任給がさらに高騰。ユニクロが5万円上昇の初任給30万円というニュースが衝撃的でした。SBIHDは22年4月に17%増の29万2,000円、カインズ35万7,588円、パーソル35万5,000円。任天堂は23万3,000円から23年4月25万6,000円。コーエーテクモHDは基本給を5万6,000円増の29万円。三井住友銀行が23年4月に初任給を5万円引き上げ25万5,000円。みずほ銀行が24年5万5,000円引き上げ26万円。りそな銀行も24年度25万5,000円と10年以上初任給を引き上げていなかったメガバンクも大幅に上がる見通しです。

 大和証券グループも6月から初任給を1万5,000円上げて28万円と25万円を超える発表が相次ぎ、実態を示すIndeedの2万4,000件の求人情報から見ても東京都での新卒採用の平均基本給は23年3月2日時点で25万6,840円と高騰しています。全国平均より7%高いとしていますので、全国でも新卒求人の初任給は高騰している可能性があります。

 コロナ禍を経てオンライン採用も浸透してきている今、全国どこからでもエントリーできる時代です。マイナビの23年卒大学生のUターン・地元就職調査では、地元に就職を希望する学生は62.6%と高いですが、働く場所が自由になった場合の勤務先と居住地域は、地方企業に勤め、地方に住みたいが29.2%に対し、東京の企業に勤めたいが11.8ポイントも上昇の31.5%と上回りました。「実現すれば地元就職するかもしれないと思うもの」との問いでは、「働きたいと思う企業がある」が1位で、「給料がよい就職先が多くある」が2位。ディスコが行った24年卒学生の就職意識調査では、就職先を選ぶポイント1位は「給与・待遇がよい」、2位が「将来性がある」との結果でいずれも待遇を重視していることがわかります。

 学生がエントリーする際の条件が初任給25万円以上とすれば、すべて東京の企業になり地元は選ばれなくなる可能性もあります。採用できない地元の大手も25万円にする動きになりそうです。21年の県別初任給表(表2)も参考にひとごとでなく、新卒採用する企業は23年に初任給25万円をめざして検討をしておく必要があります。

表1 大卒初任給の推移(円)
表2 2021年都道府県別大卒男子の初任給(1000円)と東京との比較(%)
出所 厚生労働省賃金構造基本統計

「中小企業家しんぶん」 2023年 3月 25日号より