地域の金融機関との新たな関係を紡ぐ機会に~企業づくりは対話のカギ~中同協企業環境研究センター公開研究会

 3月17日にオンラインで中同協企業環境研究センター公開研究会が開催され、18同友会から会員32名、事務局20名、研究者9名の61名が参加しました。この公開研究会は2022年5~8月に実施された「コロナ禍における中小企業の金融に関する特別調査」の成果を共有する機会として開催されたもので、4名の研究者が報告しました。

 山本篤民氏(日本大学商学部教授)からは、経営指針を作成している企業の傾向として、金融機関との良好な関係を築いておりコロナ禍でも比較的安定した経営を維持していたことが紹介され、経営指針を確立することの重要性が示されました。飯島寛之氏(立教大学経済学部准教授)からはコロナ禍時に新規で借入を行わなかった企業に着目した分析を通じて、企業規模と借入の有無や事業承継問題と借入姿勢との関係、産業構造の変化による借入環境の変化の可能性について指摘がありました。長山宗広氏(駒澤大学経済学部教授)からはリレーションシップバンキングに関して、小規模企業の特徴的な傾向や課題、経営者保証ガイドラインの要件と融資における経営者保証の関係に触れ、伴走支援についての提起がありました。藤木寛人氏(高千穂大学経営学部准教授)からは、伴走支援に基づいた事業再構築に関する事例研究として京都の会員企業を例に報告。金融機関と企業との信頼関係を軸にビジネス再構築が展開された経過を紹介しました。

 続く報告者によるパネルディスカッションで各報告の内容を深め、「企業と同友会、地域の金融機関との新たな関係を紡ぎ直す時期にあり、お互いの立場や背景などの情報を共有した上で対話を重ね、地域活性化などの共通の目的を持って中小企業の立場から発信をしていく。その場づくりを担う同友会の役割は今後ますます重要になる」ことを確認して研究会は終了しました。参加者からは「生産性や収益性、納税額にとらわれず、社会的機能としての中小企業の存在意義と役割をあらためて実感しました」などの声がありました。

「中小企業家しんぶん」 2023年 4月 15日号より